小咄
 ほの暗い部屋で、深成は小さくなっていた。
 目の前には枕が二つ据えられた白い褥が敷かれている。

 しばらくすると、ゆら、と燭台の灯が揺れた。
 御簾を上げて、真砂が入ってくる。

 そろそろと、深成は平伏した。

「よく来たな」

 短く言い、褥の上に胡坐をかく。
 しばしそのまま時が流れても、深成は平伏したまま。
 少し真砂が、訝しげな顔をした。

「……顔を上げろ」

 そう言われて初めて、また深成はそろそろと上体を起こした。
 が、俯いたまま、相変わらず小さくなっている。

 行儀見習い期間もなく、いきなり召されたのだから、作法がわからないのもあるだろうが、それだけにしては表情が硬い。
 どこか辛そうにも見える。

 真砂は手を伸ばして、深成の手を掴んだ。
 ぐい、と引っ張って引き寄せる。
 すると深成は、一層辛そうな顔をした。

「どうした」

 真砂の前で、褥に片手をついた深成に言うと、深成は俯いたまま、小さく首を振った。
 そして自ら、そろそろと真砂に身を寄せる。

 が、触れるか触れないかのところで止まった。
 緊張しているのだろうか、と、真砂がそろりと肩に手を回すと、ぴく、と深成が身を引く。

「何だよ、嫌なのか?」

 といっても、やめる気などさらさらないが、と思いつつ、ちょっと苛々しながら言うと、深成は少し慌てたように顔を上げた。

「い、いえ。あの……。い、痛いんです」

 言っている意味がわからない。
 真砂は顔をしかめつつ、深成を見た。

「初めてだってことか? だとしても、まだ痛くないだろ。何もしとらん」

「いえ、そうでなくて……。いやいや、あのっいえ、初めては初めてなのですけども。か、身体が……」

 素直な性質(たち)なのだろう、聞かれたこと全てに答える。
 が、やはり何を言いたいのか、いまいちわからない。

「身体が何だ。見せてみろ」

 この目で見たほうが早いと思い、真砂は深成を押し倒すと共に、帯を解いた。
 真砂の手が肩を押した瞬間、深成が、ぎゅっと目を瞑った。
 触れたところが痛かったらしい。

「……」

 褥の上で、大きく開いた単から、深成の肌が露わになった。
 が、その幼い肌は、身体中真っ赤に腫れ上がっている。

「どうしたんだ、これは」

 さすがにちょっと驚いて聞いてみると、不意に深成の目から、涙があふれた。

「ごめんなさい~。前のことは、ほんとに申し訳なく思ってます。お仕置きも、この通り受けました。反省してますから、どうか堪忍してください~」

 えぐえぐと泣きじゃくりながら、深成が訴える。
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