小咄
「さぁどうぞ~」

 鍵を開け、深成がドアを開く。
 真砂が玄関に入ると、再び施錠してから、深成は奥に駆け込んだ。
 そしてハンガーとタオルを持ってくる。

「とりあえず、濡れちゃったから、そこでコート脱いで」

 真砂から買い物の袋を受け取り、ハンガーを渡す。
 真砂がハンガーにコートをかけると、深成はそれをタオルで拭きながら、奥の壁にかけた。

 真砂は靴を脱ぎながら、部屋の中を眺めた。
 ワンルームマンションかと思っていたが、二間あるようだ。

「変わってるな」

 手前にキッチン。
 奥にベッドが置いてある。

「ほんとはそっちがダイニングキッチンなんだろうけど、奥の部屋が広いし、ご飯も向こうで食べるんだ」

 手招きする深成について奥に入ると、そこにはベッドと炬燵がある。
 確かにこちらのほうが広い。

「さ、座ってて」

 炬燵の電源を入れ、深成がいそいそとクッションを渡す。
 丁度ベッドが背もたれになる。
 ベッドの上には想像通り、うさぎだのくまだのねこだのが、所狭しと置かれていた。

「……このベッドの、どこで寝てるんだ?」

 真砂の見たところ、ベッドはぬいぐるみに占領されている。

「ん? 普通に寝られるよ? この子を抱っこしてね、あとの子は、皆横にいるじゃん」

 大きなうさぎを抱っこして言う。

「エコノミー症候群になりそうだな」

「え~? 余裕あるよぉ?」

 相変わらずくだらない会話を交わし、真砂は炬燵に入った。
 深成も、いそいそと真砂の隣に座る。

「は~。冷え切ってたから、おこたに入っちゃうとしばらく出られないんだよね~」

 顎まで潜り込み、ほにゃ、と頬を緩める。
 そして、ちらりと時計を見た。

 五時前。
 微妙な時間だ。

「今からケーキ食べたら、ご飯が入らなくなっちゃうね。ケーキはご飯の後にしよう。お紅茶でも入れようか?」

「ああ」

 真砂はちょっと物珍しそうに、きょろきょろしている。
 その態度がおかしく、深成はキッチンに立ちながら、ぷくく、と密かに肩を震わせた。
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