小咄

「明けましておめでとうございます～」

　ちん、と日本酒のグラスを合わせる。
　お猪口などはないので小さいガラスコップだが、一応雰囲気は出ている。
　ちなみに深成のグラスの中身は、サイダー9に日本酒1。

「課長。今日もお風呂の後でのお酒だけど、酔っ払わないでね」

「日本酒では酔わん」

　お皿におせちを取り分けながら、深成は真砂を見た。
　結局真砂の気持ちはわからないままだ。

「今年も課長、わらわの契約、よろしくね」

　おせちを摘みつつ、真砂が視線を上げた。

「契約ね。お前から辞めることはないわけか」

「だって不満はないもん。首にならない限りは続けたい」

　だから、よろしくお願いします、と頭を下げる深成に、真砂は、ふふ、と笑った。

「お前が続けたくても、俺が切るかもしれんが」

「だから、それをどうか、ないようにしてってこと」

　まさか、そんなつもりがあるのだろうか、と、深成はずいっと身を乗り出す。
　真砂は日本酒をぐいっと煽ると、とん、とグラスを置いた。

「会社の契約を切るときは、俺個人用に、別途終身契約を用意しておくさ」

　にやりと笑う。
　きょとんとしている深成には、その意味がわからない。

「？　えっと、課長が個人的に、わらわを雇ってくれるの？」

「ああ。一生な」

　ぽけ、としていた深成の脳みそに、徐々に真砂の言葉が浸透する。
　たっぷりと間があってから、大きく深成の目が見開かれた。
　だが言葉が出てこない。

---そ、それって！！　プ、プロポーズっていうんじゃないのっ？？---

　ふるふると震える深成の前で、真砂は何ら変わることなく、おせちを摘まんでいるのだった。

･:･☆･:･★･:･☆･:･★･:･☆･:･★･:・☆
　年越し～カウントダウン編。長っ！！
　これ、ほんとどんだけ書くんだよ、と何度思ったことか。
　これでもいくつか、エピソードを削っております。ほんと、これでも多分普通に書いたら100pクラスですよ。

　さて今回は、だ～いぶ関係に変化が。
　真砂課長、とうとう深成に手を出し……そうになっただけですが(￣▽￣；)今回は珍しく、真砂が落ちております。
　皆それぞれ、あるべき相手と上手くいきつつある回になりましたね。

　そして最後の最後で衝撃発言。
　はたしてこれが、ほんとにプロポーズだったのかは謎ですが。

　ていうか、付き合うのすっ飛ばしてプロポーズか。
　いやいや、もしかしたら世間的には十分付き合ってる二人かもだし、そう考えるとお付き合い期間は長いかもです。

　真砂もかなり、あからさまに自分の気持ちをちょいちょい言っております。
　鈍感な深成には伝わってないかもですが。

　今回ちょっと深成の心をSideで入れてみました。こういうの、真砂は出来ないんですよ。
　真砂は心で思ってることがあんまりないっていうか。
　意外と思ってることは、全て言葉にしております。深成に対しては、ね。

　さてこれ、行き着くとこまで行ったような気がしますが。
　真砂課長バージョン、続けられるのか？

2015/03/21　藤堂 左近