小咄
とあるmira商社 課長・真砂の病欠事情
【キャスト】
mira商社 課長:真砂・清五郎 派遣事務員:深成
社員:あき・千代・捨吉・ゆい・羽月
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
その日も始業のチャイムの鳴る少し前に席に着いた深成は、PCを立ち上げながら、ちらりとすぐ傍の上座を見た。
まだ真砂は来ていない。
社員は基本的にフレックスなので、別に九時に来る必要はないのだが、大体いつも九時前後には出社している。
今日も真砂に提出する書類がたんとある。
そのうち来るでしょ、と深成はPCに向かった。
そのうちにチャイムが鳴り、大分経っても真砂の来る気配はない。
あれれ? と深成は、予定表を見た。
どこかに直行だっただろうか。
一応営業なのだから、外回りだってある。
が、真砂の欄を見てみても、特に何も書いていない。
「ねぇ、課長、どうしたのかな」
隣の席のあきに聞いてみるが、あきも首を傾げた。
「珍しいわね。でも休暇とも書いてないから、そのうち来るんじゃない?」
軽く言う。
そだね、と深成もPCに向き直って仕事を進めていると、清五郎が二課のほうからやってきた。
「今週、課長決裁とかが必要なものが出たら、俺が代行する。真砂は今週いっぱい病欠だ」
「えええっ!!」
清五郎の言葉に被る勢いで叫んだのは千代だ。
だだだっと清五郎に駆け寄る。
「びょ、病欠って! 真砂課長が? い、一体何の病気ですのっ?」
何となく病気など無縁なイメージだっただけに、深成も驚いた。
「インフルだってよ。多少の熱だったら働くだろうが、さすがにインフルじゃな。周りに伝染(うつ)るし」
電話の声は元気そうだったから、心配はいらんよ、と笑い、清五郎は、ぽん、と千代の背を叩いた。
「ああ~。まだ水曜だってのに、来週まで課長のお姿を拝見出来ないなんて、耐えられるかしら~」
清五郎が二課に戻ってから、千代がへなへなと己の机に突っ伏す。
そんな千代を、あきは意味ありげな目で見、次いで深成に目をやった。
「インフルかぁ。じゃあ仕方ないわね。課長からの病気なら、皆喜んで伝染りたがるだろうけど」
ふふふふ、と笑う。
そして目尻を下げたまま、あきはこそっと深成に小声で囁いた。
「課長って一人暮らしよね。ちょっと気にならない?」
「え?」
「だって、インフルって結構熱出るしさ。課長、結構疲れてるだろうから、かなり辛いんじゃないかしら」
「そ、そうかな」
言われてみれば、確かに毎日かなりの仕事をこなしている。
そんな態度はおくびにも出さないので気付かないが、結構大変なのかもしれない。
「あんまり課長がダウンしてるところって、想像つかないけど」
言いつつキーボードを打ちながら、深成の頭は真砂のことを考えた。
---んでも、課長だってモノによっちゃ酔っ払うんだし、調子悪くなることもあるよね。そっか、そう考えれば、あきちゃんの言う通り、今頃苦しんでるかもしれないな---
mira商社 課長:真砂・清五郎 派遣事務員:深成
社員:あき・千代・捨吉・ゆい・羽月
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
その日も始業のチャイムの鳴る少し前に席に着いた深成は、PCを立ち上げながら、ちらりとすぐ傍の上座を見た。
まだ真砂は来ていない。
社員は基本的にフレックスなので、別に九時に来る必要はないのだが、大体いつも九時前後には出社している。
今日も真砂に提出する書類がたんとある。
そのうち来るでしょ、と深成はPCに向かった。
そのうちにチャイムが鳴り、大分経っても真砂の来る気配はない。
あれれ? と深成は、予定表を見た。
どこかに直行だっただろうか。
一応営業なのだから、外回りだってある。
が、真砂の欄を見てみても、特に何も書いていない。
「ねぇ、課長、どうしたのかな」
隣の席のあきに聞いてみるが、あきも首を傾げた。
「珍しいわね。でも休暇とも書いてないから、そのうち来るんじゃない?」
軽く言う。
そだね、と深成もPCに向き直って仕事を進めていると、清五郎が二課のほうからやってきた。
「今週、課長決裁とかが必要なものが出たら、俺が代行する。真砂は今週いっぱい病欠だ」
「えええっ!!」
清五郎の言葉に被る勢いで叫んだのは千代だ。
だだだっと清五郎に駆け寄る。
「びょ、病欠って! 真砂課長が? い、一体何の病気ですのっ?」
何となく病気など無縁なイメージだっただけに、深成も驚いた。
「インフルだってよ。多少の熱だったら働くだろうが、さすがにインフルじゃな。周りに伝染(うつ)るし」
電話の声は元気そうだったから、心配はいらんよ、と笑い、清五郎は、ぽん、と千代の背を叩いた。
「ああ~。まだ水曜だってのに、来週まで課長のお姿を拝見出来ないなんて、耐えられるかしら~」
清五郎が二課に戻ってから、千代がへなへなと己の机に突っ伏す。
そんな千代を、あきは意味ありげな目で見、次いで深成に目をやった。
「インフルかぁ。じゃあ仕方ないわね。課長からの病気なら、皆喜んで伝染りたがるだろうけど」
ふふふふ、と笑う。
そして目尻を下げたまま、あきはこそっと深成に小声で囁いた。
「課長って一人暮らしよね。ちょっと気にならない?」
「え?」
「だって、インフルって結構熱出るしさ。課長、結構疲れてるだろうから、かなり辛いんじゃないかしら」
「そ、そうかな」
言われてみれば、確かに毎日かなりの仕事をこなしている。
そんな態度はおくびにも出さないので気付かないが、結構大変なのかもしれない。
「あんまり課長がダウンしてるところって、想像つかないけど」
言いつつキーボードを打ちながら、深成の頭は真砂のことを考えた。
---んでも、課長だってモノによっちゃ酔っ払うんだし、調子悪くなることもあるよね。そっか、そう考えれば、あきちゃんの言う通り、今頃苦しんでるかもしれないな---