小咄
「お前のほうが、連れて行き甲斐があるだろうな」
「でも熱が下がらない」
ぷぅ、と膨れて、深成が布団を引き上げる。
ふふ、と笑って、真砂は深成の頭を撫でた。
「インフルだったら、今週は休みだな」
「あ、うん。課長が明日から出張だっていうから、連絡どうしようと思ってたんだけど。あきちゃんが言っておいてくれるって」
「まぁ、明日の午後からだから、朝はいるけどな。そんなこと、お前は知らないわけだし」
ここまで密に二人が会っていることなど、誰も知らない。
故に、真砂の出張のことも、深成はあきからの情報しかないはずなのだ。
「ところで課長。その出張って、いつまでなの?」
「土曜。先週も仕事出来てないし、今週も明日の午前中までだ。お陰で今月は忙しいぜ。まぁ、出張には清五郎も駆り出されるから、残る皆も大変だろうがな。部長に代理が回るし」
「土曜かぁ。長いなぁ……」
しょぼん、と深成が呟く。
真砂に会えないのは寂しいが、まだ休んでいる間で良かった。
いつもだったら会えるところで会えないのはキツい、と思い、深成は赤くなった。
何だか最近、やけに真砂べったりだ。
「顔が赤いぞ? 熱が上がってきたんじゃないのか?」
ちょっと真砂が、深成に顔を近付ける。
あわわ、と焦り、深成は顔半分まで布団に潜り込んだ。
「そ、そうかもだけど、大丈夫」
「ほんとかよ。出張に行ったら、何かあってもすぐに来られないぞ」
ということは、普段であれば、深成に何かあったらすぐに来てくれるということだ。
「課長~~」
泣きたくなるほど嬉しくなり、深成はずりずりと寝転んだまま、丸まるように上体を折って、ベッドに座っている真砂の膝に頭を乗せた。
「何だよ、どうした。しんどいのか?」
膝枕状態の深成の頭に、真砂が手を置く。
うさぎと一緒にしばし膝枕で甘えていた深成は、ふと真砂の姿を見た。
思いっきりスーツだ。
そういえば、鞄も持っていた。
「課長。会社から、直で来てくれたの?」
「ああ。朝にお前を病院に送り届けてから、そのまま車で会社に行ったし。一旦帰るのも面倒だ」
そう言って、真砂は玄関のほうに目をやった。
「そうだ。今から飯作ってやるのも大変だし、保存が効くほうがいいだろ。白飯のパック買って来たから」
ん、と深成が上体を起こすと、真砂は立ち上がってキッチンのほうへ行き、そこに置いていた袋を覗き込んだ。
「あ、あとアイス。おっと、冷凍庫に入れないと。ちょっと開けるぞ」
「うん。ありがとう」
ずりずりとくまを着たまま、深成も袋を覗き込んだ。
すでに炊き上がっている白飯のパックがいくつかと、きゅうりと白菜のお漬物が入っている。
あとは粉末スープが何種類か。
「わぁ、これだけあれば、課長が帰ってくるまで生きられる」
「もうちょっと早く来られたら、作ってやれるんだけどな」
「でもこれだけでも大分助かるよ。ありがとう」
にこりと笑う深成の頭をくしゃくしゃと撫で、真砂は鞄を掴んだ。
「じゃあな。大人しく寝てろよ」
「うん。課長も出張、無理しないようにね」
靴を履きながら、ふと真砂が顔を上げた。
「そうだ。土産のリクエストはあるか?」
「う~ん、美味しいものがいっぱいだろうしなぁ。あ! A山動物園のぬいぐるみ!」
「勘弁してくれ」
一秒も考えることなく却下し、再度深成の頭をくしゃ、と撫でると、真砂は軽く手を挙げて出て行った。
「でも熱が下がらない」
ぷぅ、と膨れて、深成が布団を引き上げる。
ふふ、と笑って、真砂は深成の頭を撫でた。
「インフルだったら、今週は休みだな」
「あ、うん。課長が明日から出張だっていうから、連絡どうしようと思ってたんだけど。あきちゃんが言っておいてくれるって」
「まぁ、明日の午後からだから、朝はいるけどな。そんなこと、お前は知らないわけだし」
ここまで密に二人が会っていることなど、誰も知らない。
故に、真砂の出張のことも、深成はあきからの情報しかないはずなのだ。
「ところで課長。その出張って、いつまでなの?」
「土曜。先週も仕事出来てないし、今週も明日の午前中までだ。お陰で今月は忙しいぜ。まぁ、出張には清五郎も駆り出されるから、残る皆も大変だろうがな。部長に代理が回るし」
「土曜かぁ。長いなぁ……」
しょぼん、と深成が呟く。
真砂に会えないのは寂しいが、まだ休んでいる間で良かった。
いつもだったら会えるところで会えないのはキツい、と思い、深成は赤くなった。
何だか最近、やけに真砂べったりだ。
「顔が赤いぞ? 熱が上がってきたんじゃないのか?」
ちょっと真砂が、深成に顔を近付ける。
あわわ、と焦り、深成は顔半分まで布団に潜り込んだ。
「そ、そうかもだけど、大丈夫」
「ほんとかよ。出張に行ったら、何かあってもすぐに来られないぞ」
ということは、普段であれば、深成に何かあったらすぐに来てくれるということだ。
「課長~~」
泣きたくなるほど嬉しくなり、深成はずりずりと寝転んだまま、丸まるように上体を折って、ベッドに座っている真砂の膝に頭を乗せた。
「何だよ、どうした。しんどいのか?」
膝枕状態の深成の頭に、真砂が手を置く。
うさぎと一緒にしばし膝枕で甘えていた深成は、ふと真砂の姿を見た。
思いっきりスーツだ。
そういえば、鞄も持っていた。
「課長。会社から、直で来てくれたの?」
「ああ。朝にお前を病院に送り届けてから、そのまま車で会社に行ったし。一旦帰るのも面倒だ」
そう言って、真砂は玄関のほうに目をやった。
「そうだ。今から飯作ってやるのも大変だし、保存が効くほうがいいだろ。白飯のパック買って来たから」
ん、と深成が上体を起こすと、真砂は立ち上がってキッチンのほうへ行き、そこに置いていた袋を覗き込んだ。
「あ、あとアイス。おっと、冷凍庫に入れないと。ちょっと開けるぞ」
「うん。ありがとう」
ずりずりとくまを着たまま、深成も袋を覗き込んだ。
すでに炊き上がっている白飯のパックがいくつかと、きゅうりと白菜のお漬物が入っている。
あとは粉末スープが何種類か。
「わぁ、これだけあれば、課長が帰ってくるまで生きられる」
「もうちょっと早く来られたら、作ってやれるんだけどな」
「でもこれだけでも大分助かるよ。ありがとう」
にこりと笑う深成の頭をくしゃくしゃと撫で、真砂は鞄を掴んだ。
「じゃあな。大人しく寝てろよ」
「うん。課長も出張、無理しないようにね」
靴を履きながら、ふと真砂が顔を上げた。
「そうだ。土産のリクエストはあるか?」
「う~ん、美味しいものがいっぱいだろうしなぁ。あ! A山動物園のぬいぐるみ!」
「勘弁してくれ」
一秒も考えることなく却下し、再度深成の頭をくしゃ、と撫でると、真砂は軽く手を挙げて出て行った。