小咄
「でもそこで、深成ちゃんがはっきり言って欲しいって言って来たんですよね? 好かれてるっていうのはわかってても、じゃあどうしたいってところまで言ってくれないと、やっぱり不安ですよ。付き合ってるのかそうじゃないのかがわからないと、うっかり他の人に告白とかされたら、そっちに行ってもいいの? てなりますよ。まして深成ちゃんて結構モテるから、深成ちゃん本人に、きっちり『お前の恋人は俺だ』ってわからせておかないと、トンビに油揚げになりますよ」

 うむむ、と真砂の眉間に皺が寄る。
 あきは思いっきり真砂の恋人は深成である、という前提で話しているのに、否定しない。
 ここまで自然だと、気付いていないのかと、こちらが不安になる。

「まぁ深成ちゃんは課長のこと大好きですから、深成ちゃんから離れていくことはないでしょうけどね」

「そう願うがな」

 渋い顔で、ぼそ、と言う。
 おお~~っ! と、あきは心の中で再び雄叫びを上げた。

---この課長が! 深成ちゃん相手だと不安になるのかしら? うーわー、一体二人のときって、どんな感じなのよ? 課長、深成ちゃんに甘えたりするのかしら~~っ!!---

 やはり自分のことより真砂のほうが面白い。
 どう頑張っても話題はそっちに逸れてしまう。
 結局捨吉の話題は大して進展しないまま、あきは電車を降りることとなった。



 そして電車は小松町駅へ。
 九度山駅で、一応真砂は、ちらりと深成の様子を窺った。

 が、いつものことながら、深成はくーすかと眠りこけていて、全く起きる気配はなかった。
 いっそ起こすのが可哀想なほどよく寝ているので、そのまま真砂は自分の家の最寄り駅まで来たわけだ。

「おい、ちょっと起きろ」

 まだ八時過ぎである。
 周りには普通に人がいるため、さすがに大の大人をおんぶしたくない。
 タクシー乗り場までは歩いて貰わないといけないため、真砂は深成を揺り起こした。

「ん~……」

 ごしごし、と目を擦り、ふわ、とあくびをする。
 でもまだ半目だ。

「ちょっとだけ我慢しろ。タクシーまで歩いてくれよ」

 言いつつ、さっさと手を引いて、真砂はホームに降りた。
 よろよろと深成がついてくる。
 今にも寝そうなので、真砂は足早にタクシーに乗り込むと、さっさと行先を告げた。

 駅から真砂のマンションまでは、そう遠くない。
 五分もかからないお蔭で、また深成が爆睡してしまう前についた。
 そのまま深成を支え、無事に部屋に到着する。

「……ふ~~」

 自分の荷物と深成の荷物に、深成本人を抱えて、真砂は玄関で息をついた。

「飯はどうする? ていうか、もう目ぇ開かないか」

 片手で支えている深成は、最早ふらふらだ。
 のろのろと顔を上げ、目を動かして寝室を見る。

「お腹……空いてるけど……。何かよくわかんない。とにかく今は眠いよぅ」

「じゃ、もう寝とけ」

 真砂は荷物を廊下に置くと、ひょい、と深成を抱き上げた。
 そのまま寝室に入り、ベッドに降ろす。
 ぐぅぐぅ寝入ってしまった深成に布団をかけると、真砂はしばらくその寝顔を眺め、一つキスを落とすと部屋を出るのであった。

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 スキー旅行編。
 もう多分、このメンバーは皆公認カップルですわ。
 いや一人捨吉が気付いているのかいないのか。

 真砂ももう限界らしいですが、連れて帰ったものの、深成は睡魔に勝てずに結果助かったようで。

 つか捨吉。いい加減もう言えよ( ̄▽ ̄)
 どっかで言わそうかとも思ったんですけど、タイミングがなく、またもあきちゃんゲットならず。
 この初詣で、いい加減言ってるかもですがね。

 千代と清五郎は、二人車に残ったわけですし、その後何かあったかもです。
 うっかりここのほうが、結婚が現実味を帯びているかも。

 さてさて次こそ真砂の欲望は叶えられるか?
 それにしてもあきちゃんの誘導尋問にあっさり引っかかる辺り、真砂も何気に迂闊くんです( ̄▽ ̄)

2015/11/27 藤堂 左近
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