小咄
とある高校の実力テスト
【キャスト】
三年生:真砂 一年生:深成・あき
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
「うわぁ。今回も一位は真砂先輩ね」
廊下に貼り出された期末テスト順位表を見上げ、あきは感嘆の声を発した。
どのテストでも、いつでも一位は真砂である。
「凄いねぇ。いっつも一位だったら、探す手間ないもんね」
階段を下りながら、深成が言う。
今貼り出されているのは先日あった期末テストの結果なので、各学年の階にそれぞれ学年別の順位が貼り出される。
深成たちは自分たち一年の階で、一年生の結果を眺めた。
「わらわ、三十位ぐらいか」
「あたしもそれぐらいね」
順位表を貼り出されるとはいえ、最下位までではなく、上位五十名だ。
「次は全校一斉実力テストね。あれは全学年だし、学年関係なく順位が出るから楽しみね」
「それでも真砂先輩が一位取るんだろうね」
言いながら廊下を歩いていたあきと深成だが、ふと深成が持っていた荷物に目を落とした。
「あ! ノート間違えちゃった! あきちゃん、先行ってて」
「あっ! 深成ちゃんっ!」
叫びざま、ぱっと身を翻した深成を、あきが呼び止める。
が、少し遅く、深成は渡り廊下を曲がってきた人物に、派手にぶつかった。
「うにゃんっ!!」
どてーん、と派手に転がった深成の荷物が散らばる。
「ご、ごめんなさ~い」
慌てて身を起こした深成は、前に立っている人物に目を見開いた。
あきも少し後ろで固まっている。
目の前にいるのは、全校生徒の憧れ、真砂先輩ではないか。
「……」
動きをなくしている深成とあきを冷たい目で見、真砂は屈んで散らばった教科書を拾った。
「……あ……あああっ! あのっ! ありがとうございますっ!」
はた、と我に返り、深成は、ぱぱぱっとその辺りに散らばったノートや下敷きを掻き集め、真砂から教科書を受け取った。
そして、がばっ! と頭を下げると、ててて、と逃げるようにあきのほうへ駆け去り、慌ててその場を去った。
「ああ……。ノート、結局取りに行けなかったな」
移動教室の先で、深成は教科書をまじまじ見ながら呟いた。
「凄いわねぇ、深成ちゃん。真砂先輩にぶち当たるなんて」
隣の席からあきが身を乗り出す。
学校というのは不思議なもので、一つの建物の中にいるのに、学年の違う者と会うことは滅多にない。
まして一年坊主が最上級生などに触れ合うなどということは、部活でもない限り、まずないのだ。
「格好良かったわぁ~。あの恐ろしい雰囲気と、この上なく整ったお顔。別次元の人みたいだわ。あんな間近で見たの初めてよ。心臓が止まるかと思ったわ」
ほぅ、と胸に手を当てて、あきが言う。
深成は相変わらず教科書を眺めた。
---この教科書、真砂先輩が拾ってくれた。うん、格好良かったな---
ぼーっとしているうちにチャイムが鳴り、授業が始まる。
深成は教科書を開きながら、はっとした。
ペンケースがない。
---えっ。……あ! あのとき落としちゃったんだ!---
教室を出たときは持っていた。
ということは、真砂にぶつかったときに落としたとしか考えられない。
---う~……、今日はツイてるんだかツイてないんだか。あああ、あのくまちゃん、お気に入りなのに---
しょぼぼ~んと項垂れる。
ちなみに『くまちゃん』というのがペンケースだ。
ぬいぐるみ型のペンケースなのだろう。
たぶん中身もそれ系だ。
---ああ、あれぽわぽわだから、落ちたのわかんなかったんだ。ショック……---
しゅん、としながら、仕方なくその時間はあきに筆記用具を借りて過ごした。
三年生:真砂 一年生:深成・あき
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「うわぁ。今回も一位は真砂先輩ね」
廊下に貼り出された期末テスト順位表を見上げ、あきは感嘆の声を発した。
どのテストでも、いつでも一位は真砂である。
「凄いねぇ。いっつも一位だったら、探す手間ないもんね」
階段を下りながら、深成が言う。
今貼り出されているのは先日あった期末テストの結果なので、各学年の階にそれぞれ学年別の順位が貼り出される。
深成たちは自分たち一年の階で、一年生の結果を眺めた。
「わらわ、三十位ぐらいか」
「あたしもそれぐらいね」
順位表を貼り出されるとはいえ、最下位までではなく、上位五十名だ。
「次は全校一斉実力テストね。あれは全学年だし、学年関係なく順位が出るから楽しみね」
「それでも真砂先輩が一位取るんだろうね」
言いながら廊下を歩いていたあきと深成だが、ふと深成が持っていた荷物に目を落とした。
「あ! ノート間違えちゃった! あきちゃん、先行ってて」
「あっ! 深成ちゃんっ!」
叫びざま、ぱっと身を翻した深成を、あきが呼び止める。
が、少し遅く、深成は渡り廊下を曲がってきた人物に、派手にぶつかった。
「うにゃんっ!!」
どてーん、と派手に転がった深成の荷物が散らばる。
「ご、ごめんなさ~い」
慌てて身を起こした深成は、前に立っている人物に目を見開いた。
あきも少し後ろで固まっている。
目の前にいるのは、全校生徒の憧れ、真砂先輩ではないか。
「……」
動きをなくしている深成とあきを冷たい目で見、真砂は屈んで散らばった教科書を拾った。
「……あ……あああっ! あのっ! ありがとうございますっ!」
はた、と我に返り、深成は、ぱぱぱっとその辺りに散らばったノートや下敷きを掻き集め、真砂から教科書を受け取った。
そして、がばっ! と頭を下げると、ててて、と逃げるようにあきのほうへ駆け去り、慌ててその場を去った。
「ああ……。ノート、結局取りに行けなかったな」
移動教室の先で、深成は教科書をまじまじ見ながら呟いた。
「凄いわねぇ、深成ちゃん。真砂先輩にぶち当たるなんて」
隣の席からあきが身を乗り出す。
学校というのは不思議なもので、一つの建物の中にいるのに、学年の違う者と会うことは滅多にない。
まして一年坊主が最上級生などに触れ合うなどということは、部活でもない限り、まずないのだ。
「格好良かったわぁ~。あの恐ろしい雰囲気と、この上なく整ったお顔。別次元の人みたいだわ。あんな間近で見たの初めてよ。心臓が止まるかと思ったわ」
ほぅ、と胸に手を当てて、あきが言う。
深成は相変わらず教科書を眺めた。
---この教科書、真砂先輩が拾ってくれた。うん、格好良かったな---
ぼーっとしているうちにチャイムが鳴り、授業が始まる。
深成は教科書を開きながら、はっとした。
ペンケースがない。
---えっ。……あ! あのとき落としちゃったんだ!---
教室を出たときは持っていた。
ということは、真砂にぶつかったときに落としたとしか考えられない。
---う~……、今日はツイてるんだかツイてないんだか。あああ、あのくまちゃん、お気に入りなのに---
しょぼぼ~んと項垂れる。
ちなみに『くまちゃん』というのがペンケースだ。
ぬいぐるみ型のペンケースなのだろう。
たぶん中身もそれ系だ。
---ああ、あれぽわぽわだから、落ちたのわかんなかったんだ。ショック……---
しゅん、としながら、仕方なくその時間はあきに筆記用具を借りて過ごした。