小咄
とある高校生カップルの初デート
【キャスト】
彼氏:真砂 彼女:深成
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
それは真砂と深成が付き合って一か月ほど経った頃。
お弁当を食べながら、深成はあきと映画の雑誌を見ていた。
「ねぇあきちゃん。これ、一緒に行かない?」
「ていうか深成ちゃん。こういうのこそ、真砂先輩と行きなよ」
深成の指差す情報を見ながら、あきが言う。
「あ、でも先輩と行くなら、もっと恋愛度の高いもののほうがいいかもだけど」
深成が行きたがっているのは、うさぎの童話的なものだ。
可愛いが、真砂には似合わない。
「大体深成ちゃん、先輩と付き合ってるんでしょ? でもデートとかしてる?」
ほぼ毎日一緒に帰っているが、どうもそれ以上の付き合いをしているとも思えない。
あきが問うと、案の定深成は首を傾げた。
「え……。う、う~ん……。帰りに図書館に寄ったりはするけど……」
それは単なる用事なのでは、とあきは疑いたくなる。
「もっとがっつりお休みの日に遊びなよ。折角付き合ってるのに、何で学校でしか会わないのよ」
「だ、だって先輩、受験生だし……」
「受験生だって、四六時中勉強してるわけじゃないでしょ。息抜きだって必要だろうし」
あきに言われ、う~ん、と深成は考える。
あきの指摘の通り、まだ真砂とデートというものをしたことはない。
「深成ちゃんは、こういうの先輩と行きたいと思わないの?」
「そんなことないけど。でも先輩も、別に土日に会おうとか言わないし」
「電話とかもないの?」
「たまにかかってくるけど」
ふ~む、とあきが唸った。
どうやらさして仲は進展していないようだ。
---今回は初めて真砂先輩から告ったっていうから、結構あからさまな変化があるかと期待してたのに。まぁ……毎日一緒に帰るだけでも、今までとは全然違うんだろうけど---
真砂と深成が付き合いだしたということは、あっという間に学校中に知れ渡ることとなった。
何といっても今まで告白されても全く相手を構ってこなかった真砂が、自ら告白したのだ。
それだけでも大事件である。
そして自ら告白したことを裏付けるように、放課後は一緒に帰っている。
相手を待つことなどしたことのない真砂が、深成を待っているのだ。
これはあり得ないことである。
「じゃあ、良い機会だわ。先輩を映画に誘ってみなよね」
ずい、と雑誌を押しやり、あきは深成にミッションを下した。
その日の帰り。
いつものように真砂の横を歩きながら、深成はちらちらと彼を窺った。
「……ねぇ先輩」
意を決して声をかける。
真砂が、視線を落とした。
「あのね。週末、予定ある?」
「……どっか行くか?」
さらっと、真砂が言った。
途端に、ぱっと深成の顔が輝く。
ちょっと真砂が視線を逸らせた。
わかりやすい深成に、少し照れたらしい。
「あのねっ! わらわ、見たい映画があるの。『腹黒うさぎと魔法とかげの舞踏会』っていうやつ」
どんな映画だ。
微妙に真砂の目が胡乱になったが、深成が嬉しそうなので、特に何も言わなかった。
「えへ、嬉しい。初デートだね」
にこにこと言う深成に、やはり真砂は照れたように目を逸らした。
彼氏:真砂 彼女:深成
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
それは真砂と深成が付き合って一か月ほど経った頃。
お弁当を食べながら、深成はあきと映画の雑誌を見ていた。
「ねぇあきちゃん。これ、一緒に行かない?」
「ていうか深成ちゃん。こういうのこそ、真砂先輩と行きなよ」
深成の指差す情報を見ながら、あきが言う。
「あ、でも先輩と行くなら、もっと恋愛度の高いもののほうがいいかもだけど」
深成が行きたがっているのは、うさぎの童話的なものだ。
可愛いが、真砂には似合わない。
「大体深成ちゃん、先輩と付き合ってるんでしょ? でもデートとかしてる?」
ほぼ毎日一緒に帰っているが、どうもそれ以上の付き合いをしているとも思えない。
あきが問うと、案の定深成は首を傾げた。
「え……。う、う~ん……。帰りに図書館に寄ったりはするけど……」
それは単なる用事なのでは、とあきは疑いたくなる。
「もっとがっつりお休みの日に遊びなよ。折角付き合ってるのに、何で学校でしか会わないのよ」
「だ、だって先輩、受験生だし……」
「受験生だって、四六時中勉強してるわけじゃないでしょ。息抜きだって必要だろうし」
あきに言われ、う~ん、と深成は考える。
あきの指摘の通り、まだ真砂とデートというものをしたことはない。
「深成ちゃんは、こういうの先輩と行きたいと思わないの?」
「そんなことないけど。でも先輩も、別に土日に会おうとか言わないし」
「電話とかもないの?」
「たまにかかってくるけど」
ふ~む、とあきが唸った。
どうやらさして仲は進展していないようだ。
---今回は初めて真砂先輩から告ったっていうから、結構あからさまな変化があるかと期待してたのに。まぁ……毎日一緒に帰るだけでも、今までとは全然違うんだろうけど---
真砂と深成が付き合いだしたということは、あっという間に学校中に知れ渡ることとなった。
何といっても今まで告白されても全く相手を構ってこなかった真砂が、自ら告白したのだ。
それだけでも大事件である。
そして自ら告白したことを裏付けるように、放課後は一緒に帰っている。
相手を待つことなどしたことのない真砂が、深成を待っているのだ。
これはあり得ないことである。
「じゃあ、良い機会だわ。先輩を映画に誘ってみなよね」
ずい、と雑誌を押しやり、あきは深成にミッションを下した。
その日の帰り。
いつものように真砂の横を歩きながら、深成はちらちらと彼を窺った。
「……ねぇ先輩」
意を決して声をかける。
真砂が、視線を落とした。
「あのね。週末、予定ある?」
「……どっか行くか?」
さらっと、真砂が言った。
途端に、ぱっと深成の顔が輝く。
ちょっと真砂が視線を逸らせた。
わかりやすい深成に、少し照れたらしい。
「あのねっ! わらわ、見たい映画があるの。『腹黒うさぎと魔法とかげの舞踏会』っていうやつ」
どんな映画だ。
微妙に真砂の目が胡乱になったが、深成が嬉しそうなので、特に何も言わなかった。
「えへ、嬉しい。初デートだね」
にこにこと言う深成に、やはり真砂は照れたように目を逸らした。