小咄
とあるmira商社でのホワイトデー
【キャスト】
mira商社 課長:真砂 派遣社員:深成
社員:捨吉・あき・千代
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
三月十日。
mira商社営業部一課では、二人の男が頭を悩ませていた。
---ホワイトデー、どうしよう。折角付き合えたんだし、一か月記念日だし、特別なことしたいよなぁ。何がいいかなぁ---
PCを打ちながら、捨吉はう~んう~んと唸っていた。
VDにめでたくあきと付き合うようになったのだが、元々仲が良かったため、付き合ったからといって、特に関係に変化はない。
プライベートなやり取りは増えたが、それだけだ。
「あんちゃん、どうしたの。お腹でも痛いの?」
斜め前のモニターの陰から、深成がぴょこりと顔を出した。
「い、いや。そうだ、深成。ホワイトデーは何が欲しい?」
一応深成にもチョコは貰っている。
深成には軽く聞けるなぁ、と思いながら、捨吉は聞いてみた。
「え、う~ん。お菓子でいいけど」
深成も特に構えることなく答える。
お互い意識していない故の気安さだ。
「……深成は楽ちんでいいなぁ」
しみじみ言うと、キッと深成が捨吉を睨んだ。
「何さっ」
「いや、わかりやすいのは悪いことじゃないよ。深成はそれでいいよ」
へら、と笑って誤魔化す捨吉を、同じことで悩んでいた上座の真砂が、ちらりと見た。
---こいつだって、わかりやすいわけじゃない---
内心そう思い、真砂もう~ん、と頭を悩ませた。
意外にこちらのほうが随分大人な関係なだけに、お返しが難しいらしい。
いつもなら直接本人に欲しいものを聞く真砂だが、以前捨吉に言われた『女子はサプライズが好き』ということも引っかかっているのだ。
何気に素直である。
とはいえ今まで自分でプレゼントを選んだことなどないため、何をあげれば喜ぶのかなど、さっぱりわからない。
---ぬいぐるみは、やったしなぁ---
深成のことだから、そういうふわふわしたものが好きなのだろうとは思うが、ぬいぐるみは前にお土産であげている。
それにこれ以上、家にぬいぐるみを増やされても置き場に困る。
ぬいぐるみなら何でもいいわけでもないだろう。
---もう欲しいもの聞くかな……---
慣れぬことを考えると、いつもよりも疲れる。
やはり根底には『いきなりあげても欲しくないものだとどうする』という現実的考えがある。
サプライズプレゼントというものは、出来ない者は本当に出来ないのだ。
すっかりサプライズを諦めた真砂の席に、深成が書類を持ってきた。
「課長。これ、チェックお願いします」
「ああ……」
書類を受け取るときに、ふと真砂の目が深成の手に留まった。
---指輪か……---
恋人へのプレゼントの最上級といえば指輪ではないか。
だが真砂には、何となく指輪は相手を縛るものだという思いがある。
そのとき、フロアの扉が開いて、清五郎と一緒に羽月が入って来た。
通りがかりに羽月が深成を見、笑って手を振る。
深成も曖昧に笑って、軽く頭を下げた。
---やっぱりこいつは、縛っておかないと危険か?---
指輪をしていれば、それを見ただけで大体彼氏の有無がわかる。
単なるファッションでする者もいるが、深成などそれこそ意味がないとしないタイプだ。
だがそういうタイプだからこそ、いきなり指輪などしていれば、周りの目がやかましそうである。
---まぁいいか。いよいよとなったら、もう結婚してしまえばいい---
さらっと凄いことを考える。
「課長? どこかミスってる?」
深成の声に我に返れば、真砂は受け取った書類を一枚めくっただけで動きを止めていた。
mira商社 課長:真砂 派遣社員:深成
社員:捨吉・あき・千代
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
三月十日。
mira商社営業部一課では、二人の男が頭を悩ませていた。
---ホワイトデー、どうしよう。折角付き合えたんだし、一か月記念日だし、特別なことしたいよなぁ。何がいいかなぁ---
PCを打ちながら、捨吉はう~んう~んと唸っていた。
VDにめでたくあきと付き合うようになったのだが、元々仲が良かったため、付き合ったからといって、特に関係に変化はない。
プライベートなやり取りは増えたが、それだけだ。
「あんちゃん、どうしたの。お腹でも痛いの?」
斜め前のモニターの陰から、深成がぴょこりと顔を出した。
「い、いや。そうだ、深成。ホワイトデーは何が欲しい?」
一応深成にもチョコは貰っている。
深成には軽く聞けるなぁ、と思いながら、捨吉は聞いてみた。
「え、う~ん。お菓子でいいけど」
深成も特に構えることなく答える。
お互い意識していない故の気安さだ。
「……深成は楽ちんでいいなぁ」
しみじみ言うと、キッと深成が捨吉を睨んだ。
「何さっ」
「いや、わかりやすいのは悪いことじゃないよ。深成はそれでいいよ」
へら、と笑って誤魔化す捨吉を、同じことで悩んでいた上座の真砂が、ちらりと見た。
---こいつだって、わかりやすいわけじゃない---
内心そう思い、真砂もう~ん、と頭を悩ませた。
意外にこちらのほうが随分大人な関係なだけに、お返しが難しいらしい。
いつもなら直接本人に欲しいものを聞く真砂だが、以前捨吉に言われた『女子はサプライズが好き』ということも引っかかっているのだ。
何気に素直である。
とはいえ今まで自分でプレゼントを選んだことなどないため、何をあげれば喜ぶのかなど、さっぱりわからない。
---ぬいぐるみは、やったしなぁ---
深成のことだから、そういうふわふわしたものが好きなのだろうとは思うが、ぬいぐるみは前にお土産であげている。
それにこれ以上、家にぬいぐるみを増やされても置き場に困る。
ぬいぐるみなら何でもいいわけでもないだろう。
---もう欲しいもの聞くかな……---
慣れぬことを考えると、いつもよりも疲れる。
やはり根底には『いきなりあげても欲しくないものだとどうする』という現実的考えがある。
サプライズプレゼントというものは、出来ない者は本当に出来ないのだ。
すっかりサプライズを諦めた真砂の席に、深成が書類を持ってきた。
「課長。これ、チェックお願いします」
「ああ……」
書類を受け取るときに、ふと真砂の目が深成の手に留まった。
---指輪か……---
恋人へのプレゼントの最上級といえば指輪ではないか。
だが真砂には、何となく指輪は相手を縛るものだという思いがある。
そのとき、フロアの扉が開いて、清五郎と一緒に羽月が入って来た。
通りがかりに羽月が深成を見、笑って手を振る。
深成も曖昧に笑って、軽く頭を下げた。
---やっぱりこいつは、縛っておかないと危険か?---
指輪をしていれば、それを見ただけで大体彼氏の有無がわかる。
単なるファッションでする者もいるが、深成などそれこそ意味がないとしないタイプだ。
だがそういうタイプだからこそ、いきなり指輪などしていれば、周りの目がやかましそうである。
---まぁいいか。いよいよとなったら、もう結婚してしまえばいい---
さらっと凄いことを考える。
「課長? どこかミスってる?」
深成の声に我に返れば、真砂は受け取った書類を一枚めくっただけで動きを止めていた。