小咄
「で、さぁ~。そうだ。あきちゃんに、何あげればいいと思う~?」
駅に向かいながら、捨吉が深成に聞いた。
何かすっかり関係ないことばかりで盛り上がって、肝心のところを決める前に酔っ払ってしまった。
若干ふらつく足で改札を抜ける。
「う~ん、そうだな~。わらわ、課長から何貰おう~」
深成も結構酔っ払ってしまった。
話の内容が内容だったので、いつもより早いペースで飲んでしまったのだ。
薄い梅酒サワーだったので潰れはしないが、元々が弱いので頭はぼーっとするし、ふわふわとして雲の上を歩いているようだ。
「こらこら深成~。あげてないのに貰えるとか思うなよ? でもそうだな、課長が本気で深成を好いてたら、逆バレンタインとして自分からホワイトデーに何かくれるかも?」
「あははは~。課長がそんな、イベントに乗っかるようなことするかなぁ~。ホワイトデーの存在も怪しいぐらいじゃない~?」
「はははっ! それは言えてる。サプライズ精神も皆無だしさぁ。でも課長は、そこがまた格好良いんだよな~」
「そだね~。課長、格好良いよね~」
二人とも酔っ払っているので、お互い何を言っても気にならない。
電車に乗りつつ、深成は、う~んと考えた。
「わらわは何が欲しいかな~」
「深成はお菓子の詰め合わせじゃないの~? 課長もそう言ってたよ~?」
「えっ! 真砂、そんなこと言ってたのっ」
「こら深成~。課長を呼び捨てにするなんて駄目だよ~」
「あ、ととと」
酔っ払っていると、うっかりしたところでぼろが出てしまう。
ぼーっとする頭が若干しっかりし、慌てて深成は口を押えた。
「お、お菓子なんて食べたらなくなっちゃう」
チョコだってそうなのだが。
なくなるからいい、とも言えるのだが、本気のお返しであれば、やはり残るものがいい。
「んでもさ、課長がわらわにあげたいって思ってくれることが大事じゃん」
折角若干酔いは醒めたように思ったのに、油断するとあっという間に理性は眠りについてしまう。
ぽろ、と深成がこぼしたことに、捨吉は、うん、と頷いた。
「そうだよね。いや、それはそうだろうけど。もちろん気持ちはあるよ。その上で、何がいいかなって」
「あげたいって思ってくれて嬉しいのって、何かなぁ。課長がくれるものなら、何でも嬉しいけど」
えへへへ、と笑う深成をじっと見、捨吉はいきなり、うにうにと深成の頭を撫で回した。
「もぅ~、深成は可愛いなぁ~! 課長もそんなこと言われたら堪らないだろうな~!」
「そうかな~。でもさ、何でもいいってのは、言われたほうからしたら困るよね?」
「そうだね。わかんないから聞いてるんだし。特に課長なんて、ほんとにそういうこと、わかんないっぽいし」
「あんちゃん、課長のこと詳しいねぇ」
捨吉はよく真砂と外出するので、そのときに何か聞いているのかもしれない。
「前に聞いたことあるんだよね。課長は男前だし、恋愛経験豊富だろうな、と思って。でも意外と、そうでもないかも」
ぷぷぷ、と笑う。
ずいっと深成が、捨吉に身を寄せた。
「え、どういうこと? 課長の今までの経験を聞いたの?」
元カノのことなど聞きたくはないが、気にはなる。
真砂は今までどんな恋愛をしてきたのだろう?
まさか深成が初めてではあるまい。
慣れてない風ではなかった。
「あれ? 気になる?」
「もちろん!」
大きく頷き、深成はじぃっと捨吉を見る。
その必死さに、捨吉は苦笑いした。
「ていうか、あのまんまだよ、多分。仕事するときと一緒。相手のことも、あんまり考えないっぽい。課長からしたら、付き合ってるとも思ってなかったんじゃない?」
「え、そうなのかな?」
「何となく。まぁ課長が誰かと付き合ってるときに傍にいたことがないから、想像つかないだけかもしれないけど。でもあそこまで相手の誕生日とかクリスマスとかに無頓着って、相手のこと想ってるとも思えないし。課長はさ、自分から好きにならないと続かないと思う」
駅に向かいながら、捨吉が深成に聞いた。
何かすっかり関係ないことばかりで盛り上がって、肝心のところを決める前に酔っ払ってしまった。
若干ふらつく足で改札を抜ける。
「う~ん、そうだな~。わらわ、課長から何貰おう~」
深成も結構酔っ払ってしまった。
話の内容が内容だったので、いつもより早いペースで飲んでしまったのだ。
薄い梅酒サワーだったので潰れはしないが、元々が弱いので頭はぼーっとするし、ふわふわとして雲の上を歩いているようだ。
「こらこら深成~。あげてないのに貰えるとか思うなよ? でもそうだな、課長が本気で深成を好いてたら、逆バレンタインとして自分からホワイトデーに何かくれるかも?」
「あははは~。課長がそんな、イベントに乗っかるようなことするかなぁ~。ホワイトデーの存在も怪しいぐらいじゃない~?」
「はははっ! それは言えてる。サプライズ精神も皆無だしさぁ。でも課長は、そこがまた格好良いんだよな~」
「そだね~。課長、格好良いよね~」
二人とも酔っ払っているので、お互い何を言っても気にならない。
電車に乗りつつ、深成は、う~んと考えた。
「わらわは何が欲しいかな~」
「深成はお菓子の詰め合わせじゃないの~? 課長もそう言ってたよ~?」
「えっ! 真砂、そんなこと言ってたのっ」
「こら深成~。課長を呼び捨てにするなんて駄目だよ~」
「あ、ととと」
酔っ払っていると、うっかりしたところでぼろが出てしまう。
ぼーっとする頭が若干しっかりし、慌てて深成は口を押えた。
「お、お菓子なんて食べたらなくなっちゃう」
チョコだってそうなのだが。
なくなるからいい、とも言えるのだが、本気のお返しであれば、やはり残るものがいい。
「んでもさ、課長がわらわにあげたいって思ってくれることが大事じゃん」
折角若干酔いは醒めたように思ったのに、油断するとあっという間に理性は眠りについてしまう。
ぽろ、と深成がこぼしたことに、捨吉は、うん、と頷いた。
「そうだよね。いや、それはそうだろうけど。もちろん気持ちはあるよ。その上で、何がいいかなって」
「あげたいって思ってくれて嬉しいのって、何かなぁ。課長がくれるものなら、何でも嬉しいけど」
えへへへ、と笑う深成をじっと見、捨吉はいきなり、うにうにと深成の頭を撫で回した。
「もぅ~、深成は可愛いなぁ~! 課長もそんなこと言われたら堪らないだろうな~!」
「そうかな~。でもさ、何でもいいってのは、言われたほうからしたら困るよね?」
「そうだね。わかんないから聞いてるんだし。特に課長なんて、ほんとにそういうこと、わかんないっぽいし」
「あんちゃん、課長のこと詳しいねぇ」
捨吉はよく真砂と外出するので、そのときに何か聞いているのかもしれない。
「前に聞いたことあるんだよね。課長は男前だし、恋愛経験豊富だろうな、と思って。でも意外と、そうでもないかも」
ぷぷぷ、と笑う。
ずいっと深成が、捨吉に身を寄せた。
「え、どういうこと? 課長の今までの経験を聞いたの?」
元カノのことなど聞きたくはないが、気にはなる。
真砂は今までどんな恋愛をしてきたのだろう?
まさか深成が初めてではあるまい。
慣れてない風ではなかった。
「あれ? 気になる?」
「もちろん!」
大きく頷き、深成はじぃっと捨吉を見る。
その必死さに、捨吉は苦笑いした。
「ていうか、あのまんまだよ、多分。仕事するときと一緒。相手のことも、あんまり考えないっぽい。課長からしたら、付き合ってるとも思ってなかったんじゃない?」
「え、そうなのかな?」
「何となく。まぁ課長が誰かと付き合ってるときに傍にいたことがないから、想像つかないだけかもしれないけど。でもあそこまで相手の誕生日とかクリスマスとかに無頓着って、相手のこと想ってるとも思えないし。課長はさ、自分から好きにならないと続かないと思う」