小咄
「じゃあわらわのこと、ちゃんと好いてくれてるってことだよね。そうだよね、ちゃんとそう言ってくれたもんね」
「あれ深成。もうすでに課長に告白された?」
「あ~、ととと。んにゃ、さっきほら、あんちゃんが言ってくれたでしょ。課長はわらわを好いてるって」
「ああ、うん。それは自信あるよ。でもそうか、深成も課長のこと好きなんだったら、課長から何欲しい?」
「え~っと……。そうだなぁ~」
お互い酔っ払っているので、際どいことも程よくスルーで済まされる。
電車の揺れで酔いが回って来たこともあり、深成は気にせず、う~ん、と考えた。
「何が欲しいかなぁ~。課長がずーっと一緒にいてくれればいいかなぁ」
「こらこら深成~。いきなりそれ言われたら、課長も困るんじゃないか? いやでも案外あっさりOKくれるかな? いやぁ、課長、どれほど深成を好いてるんだろうね~? 意外とめちゃくちゃ好きだったりして」
「うん。わらわも課長、めちゃくちゃ好き」
「こらこら~。もぅ、そういうことは課長に言えよ。俺もあきちゃんに、そんなこと言われてみたい」
「課長には大好きって言ってるもん」
「いいよねぇ、深成はぁ。課長が羨ましいなぁ」
ここまで言っているのに気付かない捨吉も捨吉だ。
しきりにいいなぁ、と繰り返し、にこにこしている。
「あきちゃんだったらさ、ネックレスとかいいんじゃない? 女の子っぽいもの似合いそう」
ふと思いついて、深成が言う。
「なるほど~。そっか、そうかも。でもそういうのって、好みがあるしなぁ。そういうアクセサリーってさ、どういう風に欲しいもの? モノをいきなり欲しい? それとも一緒に買いに行ったほうがいいかな」
「どうだろう~。あきちゃんの好みって……う~ん、わかんないなぁ」
「うわぁ、何か指輪よりもネックレスのほうが難しいかも」
捨吉が頭を抱える。
指輪かぁ、と深成はさりげなく自分の手に目を落とした。
アクセサリーに関することなど、真砂と話したことはない。
深成の趣味はおろか、指のサイズなども知らないだろう。
「指輪はサイズがあるから、いきなり買うのは難しいだろうね」
ぼそ、と言うと、そうか、と捨吉は顔を上げた。
「深成はあきちゃんのサイズ、知らないの?」
「知らないよぉ。わらわもあきちゃんも、指輪なんてしてないもん」
「そっかぁ。でも指輪となると、何か構えられそう」
ん? と深成が首を傾げる。
捨吉が、また照れ臭そうに笑った。
「いや、だって。いきなり指輪なんて、プロポーズみたいじゃない。あきちゃんも、いきなり指輪なんてしだしたら、ほら、ゆいさんとかに突っ込まれそうだし」
「あ……そっか」
「難しいなぁ~。でもやっぱり、アクセサリーが一番喜んで貰えるかな」
「あんちゃんがそんだけ悩んで考えてくれたってだけで嬉しいと思うよ」
にこりと言うと、捨吉は、またうにうにと深成の頭を撫で回す。
「もぅ深成はぁ~。ほんとに可愛いんだから。そういうこと課長に言ったら一発だよ」
傍から見たら、この二人のほうがまるで恋人同士である。
うにうにと撫でられながら、はた、と深成は窓の外を見た。
「あっ! じゃあね、あんちゃん。寝ちゃったら駄目だよ」
うっかり九度山駅まで行ってしまうところだった。
小松町駅の手前で気付き、慌てて深成は捨吉に言うと、電車を降りた。
にこにこと手を振る捨吉は、酔いもあって駅の名前など見ていない。
後日突っ込まれても、酔ってて間違えた、と言えばいいだろう。
改札を抜け、深成は真砂の待つ家へと急いだ。
「あれ深成。もうすでに課長に告白された?」
「あ~、ととと。んにゃ、さっきほら、あんちゃんが言ってくれたでしょ。課長はわらわを好いてるって」
「ああ、うん。それは自信あるよ。でもそうか、深成も課長のこと好きなんだったら、課長から何欲しい?」
「え~っと……。そうだなぁ~」
お互い酔っ払っているので、際どいことも程よくスルーで済まされる。
電車の揺れで酔いが回って来たこともあり、深成は気にせず、う~ん、と考えた。
「何が欲しいかなぁ~。課長がずーっと一緒にいてくれればいいかなぁ」
「こらこら深成~。いきなりそれ言われたら、課長も困るんじゃないか? いやでも案外あっさりOKくれるかな? いやぁ、課長、どれほど深成を好いてるんだろうね~? 意外とめちゃくちゃ好きだったりして」
「うん。わらわも課長、めちゃくちゃ好き」
「こらこら~。もぅ、そういうことは課長に言えよ。俺もあきちゃんに、そんなこと言われてみたい」
「課長には大好きって言ってるもん」
「いいよねぇ、深成はぁ。課長が羨ましいなぁ」
ここまで言っているのに気付かない捨吉も捨吉だ。
しきりにいいなぁ、と繰り返し、にこにこしている。
「あきちゃんだったらさ、ネックレスとかいいんじゃない? 女の子っぽいもの似合いそう」
ふと思いついて、深成が言う。
「なるほど~。そっか、そうかも。でもそういうのって、好みがあるしなぁ。そういうアクセサリーってさ、どういう風に欲しいもの? モノをいきなり欲しい? それとも一緒に買いに行ったほうがいいかな」
「どうだろう~。あきちゃんの好みって……う~ん、わかんないなぁ」
「うわぁ、何か指輪よりもネックレスのほうが難しいかも」
捨吉が頭を抱える。
指輪かぁ、と深成はさりげなく自分の手に目を落とした。
アクセサリーに関することなど、真砂と話したことはない。
深成の趣味はおろか、指のサイズなども知らないだろう。
「指輪はサイズがあるから、いきなり買うのは難しいだろうね」
ぼそ、と言うと、そうか、と捨吉は顔を上げた。
「深成はあきちゃんのサイズ、知らないの?」
「知らないよぉ。わらわもあきちゃんも、指輪なんてしてないもん」
「そっかぁ。でも指輪となると、何か構えられそう」
ん? と深成が首を傾げる。
捨吉が、また照れ臭そうに笑った。
「いや、だって。いきなり指輪なんて、プロポーズみたいじゃない。あきちゃんも、いきなり指輪なんてしだしたら、ほら、ゆいさんとかに突っ込まれそうだし」
「あ……そっか」
「難しいなぁ~。でもやっぱり、アクセサリーが一番喜んで貰えるかな」
「あんちゃんがそんだけ悩んで考えてくれたってだけで嬉しいと思うよ」
にこりと言うと、捨吉は、またうにうにと深成の頭を撫で回す。
「もぅ深成はぁ~。ほんとに可愛いんだから。そういうこと課長に言ったら一発だよ」
傍から見たら、この二人のほうがまるで恋人同士である。
うにうにと撫でられながら、はた、と深成は窓の外を見た。
「あっ! じゃあね、あんちゃん。寝ちゃったら駄目だよ」
うっかり九度山駅まで行ってしまうところだった。
小松町駅の手前で気付き、慌てて深成は捨吉に言うと、電車を降りた。
にこにこと手を振る捨吉は、酔いもあって駅の名前など見ていない。
後日突っ込まれても、酔ってて間違えた、と言えばいいだろう。
改札を抜け、深成は真砂の待つ家へと急いだ。