小咄
とあるmira商社の親睦会
【キャスト】
mira商社 課長:真砂・清五郎 派遣社員:深成
社員:捨吉・あき・千代・ゆい・羽月
高山建設社員:六郎
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
「あんたら、GWのこの日は空けとくように」
いつものランチミーティングの最後に、ミラ子社長が、ぴ、と紙を真砂と清五郎の前に差し出して言った。
『mira商社&高山建設 親睦合宿』
「……何です、これ」
怪訝な顔で言う真砂に、ミラ子社長は扇を振りつつ、にやりと口角を上げる。
「書いてあるやろ、高山建設との親睦会や。ほれ、ちょっと前に、あんたのところに研修に来たやろ。あの仕込みが素晴らしかったみたいでなぁ。また親交を深めましょうってことになったんや」
「それは良かった。でもそれはそれ、これとは別だと思いますが」
そもそも親睦『合宿』て何だ、と思いつつ言ってみると、ミラ子社長はまたも意味ありげに笑った。
「折角やから、ゆっくりしたいやろ? ちょっと遠いけど、ええところがあるんや。小さくて古い旅館やけど、そこで一泊しましょうってなってな。何かやたらと向こうさんが派遣ちゃんを気に入っててなぁ」
「そんな奴のところに、直の部下を連れて行くことはお断りします」
深成は派遣社員なので、責任者は真砂なのだ。
彼女に関する全責任は真砂にある。
真砂の場合は感情的にそれだけではないが。
「まぁなぁ。真砂課長のお気に入りやしなぁ。可愛い部下を危険に晒すのは嫌やろなぁ」
うんうんと頷きながらも、相変わらずミラ子社長の口角は上がっている。
そしてそのまま、ぴ、と扇を真砂に突き付けた。
「だから、営業部全体の親睦会にしたんや。真砂課長がぴったり引っ付いておけば、派遣ちゃんかて安心やろ。最強のボディガードやで」
「参加しない、という選択肢はないんですか」
「ない。会社同士の繋がりも大事やで。ずっと皆一緒の大部屋やから、ずっと目の届く範囲におるし、安心やろ」
それはそうかもしれないが、逆にずっと相手も一緒だということだ。
疲れそうである。
「ま、決まったことにはごちゃごちゃ言わんで。一課と二課と、派遣ちゃんにもちゃんと声かけとくんやで」
扇を振りながら、ミラ子社長は真砂ににやにやと笑みを向けるのだった。
「真砂。GWはどこか行く?」
夜、お風呂から上がった深成が髪の毛を拭きつつ真砂に言う。
「どっか行きたいところがあるなら行ってもいいが。どこも混んでるしな」
「そうだねぇ。今からだと宿も取れないしね」
「社長主催の合宿もあるしな……」
「ああ、あれ……」
ランチミーティングの後で、嫌々ながらも命令とあれば仕方なく、真砂は皆に合宿の件をメールした。
明らかに深成に好意を寄せる六郎の元へ深成を送り込みたくはないが、きっちりと社長に念を押されてしまった。
彼女だけ外すわけにはいかない。
「変わってるねぇ、親睦合宿って。でもご飯は美味しそうだったし、ちょっと楽しみ」
真砂の横にちょんと座って、深成がにこにこと言う。
真砂は読んでいた新聞を置いて、腕を深成の肩に回した。
「でも、あいつがいるんだぜ」
「ん?」
「海野」
深成が、さらに首を傾げる。
「前に研修に入って来た奴がいたろ。ほら、お前にやたらとちょっかい出してた野郎だよ」
「え~……? ……あ、そういえば、何かいたね!」
ようやく深成が、ぽん、と手を叩く。
あれほど深成に尽くした六郎のことも、深成はすっかり忘れていたらしい。
しかも。
「そういえばさ。あの人が変なこと言ったお蔭で、わらわ、ちゃんと真砂の彼女になれたんだったよね」
えへへへ、と嬉しそうに笑う。
六郎が聞いたら泣くだろう。
元々六郎は、深成が真砂に遊ばれていると言っていたのだ。
当時はまだ六郎は深成の相手が真砂だとは知らなかったが、社内の上司と付き合っている、と言えない深成の煮え切らない態度で相手に遊ばれているのだ、と解釈したらしい。
そもそも当時、深成も真砂と付き合っているのかわからない状態だった。
態度的には恋人だが、はっきり付き合おうと言われたわけではなかった。
が、六郎が『そんなこともはっきりさせないのは、遊ばれている』と言ったことで深成が泣き出し、真砂に直接聞いたのだ。
そこで初めて、ちゃんと真砂から彼女のお墨付きを貰った、というわけだ。
「そう考えると、あの人、キューピットだよ」
「何が。俺はちゃんと、その前からお前のことは俺のものだと思ってた」
「そりゃ、真砂がわらわに優しいのはわかってたけどさ。そこはちゃんと言ってくれないとわかんないよ。真砂は自分のものだって思ってるなら、ちゃんとわらわにそう言ってよ。目印ないんだから」
「じゃ、これからはしっかり目印付けておこう」
そう言って、真砂は深成の首筋にキスをした。
そして、強く吸う。
「んにゃんっ! だ、駄目だって、そんな目印っ」
「一番わかりやすいだろ」
「もうあったかいんだから、そんなとこに付けられたら目立っちゃうよ~」
「じゃあもうちょっと下」
言いつつ深成のパジャマのボタンを外して胸元に唇を這わす。
「もー! 駄目だってばっ。合宿までに消えないよぅ」
「合宿中はできないから、今のうちにやっておくんだ」
「い、一泊でしょーがっ」
「一泊でも、やりたいと思ったときにできないのは辛い」
「助平なんだから~~っ」
わたわたと暴れる深成の抵抗も空しく、その夜も深成は真砂に抱かれるのであった。
mira商社 課長:真砂・清五郎 派遣社員:深成
社員:捨吉・あき・千代・ゆい・羽月
高山建設社員:六郎
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
「あんたら、GWのこの日は空けとくように」
いつものランチミーティングの最後に、ミラ子社長が、ぴ、と紙を真砂と清五郎の前に差し出して言った。
『mira商社&高山建設 親睦合宿』
「……何です、これ」
怪訝な顔で言う真砂に、ミラ子社長は扇を振りつつ、にやりと口角を上げる。
「書いてあるやろ、高山建設との親睦会や。ほれ、ちょっと前に、あんたのところに研修に来たやろ。あの仕込みが素晴らしかったみたいでなぁ。また親交を深めましょうってことになったんや」
「それは良かった。でもそれはそれ、これとは別だと思いますが」
そもそも親睦『合宿』て何だ、と思いつつ言ってみると、ミラ子社長はまたも意味ありげに笑った。
「折角やから、ゆっくりしたいやろ? ちょっと遠いけど、ええところがあるんや。小さくて古い旅館やけど、そこで一泊しましょうってなってな。何かやたらと向こうさんが派遣ちゃんを気に入っててなぁ」
「そんな奴のところに、直の部下を連れて行くことはお断りします」
深成は派遣社員なので、責任者は真砂なのだ。
彼女に関する全責任は真砂にある。
真砂の場合は感情的にそれだけではないが。
「まぁなぁ。真砂課長のお気に入りやしなぁ。可愛い部下を危険に晒すのは嫌やろなぁ」
うんうんと頷きながらも、相変わらずミラ子社長の口角は上がっている。
そしてそのまま、ぴ、と扇を真砂に突き付けた。
「だから、営業部全体の親睦会にしたんや。真砂課長がぴったり引っ付いておけば、派遣ちゃんかて安心やろ。最強のボディガードやで」
「参加しない、という選択肢はないんですか」
「ない。会社同士の繋がりも大事やで。ずっと皆一緒の大部屋やから、ずっと目の届く範囲におるし、安心やろ」
それはそうかもしれないが、逆にずっと相手も一緒だということだ。
疲れそうである。
「ま、決まったことにはごちゃごちゃ言わんで。一課と二課と、派遣ちゃんにもちゃんと声かけとくんやで」
扇を振りながら、ミラ子社長は真砂ににやにやと笑みを向けるのだった。
「真砂。GWはどこか行く?」
夜、お風呂から上がった深成が髪の毛を拭きつつ真砂に言う。
「どっか行きたいところがあるなら行ってもいいが。どこも混んでるしな」
「そうだねぇ。今からだと宿も取れないしね」
「社長主催の合宿もあるしな……」
「ああ、あれ……」
ランチミーティングの後で、嫌々ながらも命令とあれば仕方なく、真砂は皆に合宿の件をメールした。
明らかに深成に好意を寄せる六郎の元へ深成を送り込みたくはないが、きっちりと社長に念を押されてしまった。
彼女だけ外すわけにはいかない。
「変わってるねぇ、親睦合宿って。でもご飯は美味しそうだったし、ちょっと楽しみ」
真砂の横にちょんと座って、深成がにこにこと言う。
真砂は読んでいた新聞を置いて、腕を深成の肩に回した。
「でも、あいつがいるんだぜ」
「ん?」
「海野」
深成が、さらに首を傾げる。
「前に研修に入って来た奴がいたろ。ほら、お前にやたらとちょっかい出してた野郎だよ」
「え~……? ……あ、そういえば、何かいたね!」
ようやく深成が、ぽん、と手を叩く。
あれほど深成に尽くした六郎のことも、深成はすっかり忘れていたらしい。
しかも。
「そういえばさ。あの人が変なこと言ったお蔭で、わらわ、ちゃんと真砂の彼女になれたんだったよね」
えへへへ、と嬉しそうに笑う。
六郎が聞いたら泣くだろう。
元々六郎は、深成が真砂に遊ばれていると言っていたのだ。
当時はまだ六郎は深成の相手が真砂だとは知らなかったが、社内の上司と付き合っている、と言えない深成の煮え切らない態度で相手に遊ばれているのだ、と解釈したらしい。
そもそも当時、深成も真砂と付き合っているのかわからない状態だった。
態度的には恋人だが、はっきり付き合おうと言われたわけではなかった。
が、六郎が『そんなこともはっきりさせないのは、遊ばれている』と言ったことで深成が泣き出し、真砂に直接聞いたのだ。
そこで初めて、ちゃんと真砂から彼女のお墨付きを貰った、というわけだ。
「そう考えると、あの人、キューピットだよ」
「何が。俺はちゃんと、その前からお前のことは俺のものだと思ってた」
「そりゃ、真砂がわらわに優しいのはわかってたけどさ。そこはちゃんと言ってくれないとわかんないよ。真砂は自分のものだって思ってるなら、ちゃんとわらわにそう言ってよ。目印ないんだから」
「じゃ、これからはしっかり目印付けておこう」
そう言って、真砂は深成の首筋にキスをした。
そして、強く吸う。
「んにゃんっ! だ、駄目だって、そんな目印っ」
「一番わかりやすいだろ」
「もうあったかいんだから、そんなとこに付けられたら目立っちゃうよ~」
「じゃあもうちょっと下」
言いつつ深成のパジャマのボタンを外して胸元に唇を這わす。
「もー! 駄目だってばっ。合宿までに消えないよぅ」
「合宿中はできないから、今のうちにやっておくんだ」
「い、一泊でしょーがっ」
「一泊でも、やりたいと思ったときにできないのは辛い」
「助平なんだから~~っ」
わたわたと暴れる深成の抵抗も空しく、その夜も深成は真砂に抱かれるのであった。