小咄
夜、真砂が帰って来てから、深成がやけにじーっと見てくる。
「何だよ、どうかしたか?」
風呂から上がったところで、真砂がソファに座りながら聞いた。
じ、と真砂を見ていた深成は、その途端、にこ、と笑って、いそいそとすぐ横に座ってくる。
「えへ。真砂、何にもないときは、ちゃんとそうやって聞いてくれるよね」
「何もないときって何だよ。いつもそうだろ」
「そうだけどさ。前のときは、わらわと目、合わさなかったよ。わらわがじっと見ても、何も聞かなかった」
「あのときは特別だ。もうあんなことはない」
「うん。真砂、わかりやすいよね~」
「それ、社長にも言われたな」
ため息をつきつつ、真砂は深成の肩を抱いた。
「浮気なんか、絶対できないってよ」
「……真砂はその気になれば、どんな人でも手に入れられるもんね」
実際は結構難ありな男なので、誰でも、と言われると疑問があるのだが。
ちょっと拗ねたように言うと、真砂は肩を抱いた手に力を入れて、深成を抱き寄せる。
「そんなことよりも、またお前をあんな泣かせることになると思うと心底ぞっとする」
「うん。わらわも真砂が離れて行くとか思うと、それだけで悲しくなる」
「だから、もう結婚してしまおうかとも思うんだよな」
深成は、真砂の腕の中から、ちろ、と視線を上にあげた。
やはり真砂の言い方だと、そんな先まで考えての結婚の位置づけとも思えない。
あきの言うように、いざ結婚となればちゃんと考えてくれるだろうが、もうちょっと目先のことを言っているのではないか?
「ねぇ真砂」
「ん?」
「真砂は子供好き?」
いきなりな問いに、真砂がちょっと驚いた顔をした。
「もしかして、妊娠したのか?」
「ち、違うよっ!」
慌てて否定すると、なぁんだ、と軽く流される。
残念そうでもなければ、嬉しそうでもない。
至って普通、いつも通りだ。
が、特に焦りもない、ということは、そうなっても別に構わない、という考えがあるとも言える。
「今日はやけに何か言いたげだから、そういうことか、と思ったが」
「そうじゃなくて。昨日も真砂、結婚のこと言ってたじゃん? わらわは結婚したところで、特に何も変わらないな、と思うんだけど。もう結婚してるような生活でしょ? 真砂の言う、大きく変わるのって何かなぁ、と思ったときに、もしかして子供のことかなって」
「ああ……」
「確かに結婚して一番変わるのって、そこだよね」
「まぁ、すぐに子供を作るのであればな。でも結婚したからって、必須事項ではないぞ? 作らないって夫婦もいるし、できるかどうかもわからんし。俺は絶対子供が欲しい、とまでは思わん」
あれ? と深成は首を傾げた。
ということは、やはりそこまで考えての発言ではなかったわけだ。
「? じゃあやっぱり、大きく変わることなんてないじゃん」
何のことを言ってたんだ、と不満そうに深成が言うと、真砂は、す、と目を細めた。
そして、深成を抱き上げる。
「ていうか、お前はそこまで考えてるんだ? だったらわかりそうなもんだがな」
昨日と同じ、何か含んだ邪悪な笑み。
あれ、何かまた真砂を誘うようなこと言った? と深成が若干焦っているうちに、寝室のベッドに放り投げられる。
「お前は子供が欲しいのか?」
軽くキスをしながら、真砂が言う。
「えーっと。実はまだよくわかんない。でもやっぱり、結婚したら考えるかなぁ」
「そうだな。ま、とりあえずは自然の流れに任せるが」
パジャマを脱がされながら、ふと深成は気が付いた。
「そ、そういうことっ? 真砂、結婚したら、子供ができるかどうかは流れに任せるって……」
「そういうことだ」
にやりと笑い、真砂は自分も服を脱ぐと、深成の胸に顔を埋めた。
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
惟道登場。
とうとう現代版にも出張ってくるほど何気に人気の惟道ですが。
難しい!!
この浮世離れっぷりは現代社会ではマッチしないというか。
……何だろう、何かもう空気感が違うんですよね。
惟道の、あの独特の雰囲気は、現代社会では表現できません。
案外惟道単体では何事も起こらないと思います。
知らず周りに影響を及ぼす。
書いててつくづく思ったのが、惟道と真砂は似てる、ということ。
真砂の酷い版ですよ。
ということは左近とも似てるということで、なるほど元々惟道は左近でしたからね( ̄▽ ̄)。
で、何かあまりに大したことが起こらないので変に長くなったんですけど、長くなったわりにはやっぱり何も起こってないというね。
けど穏やかすぎるあきと捨吉のところに、若干波風を立てたようにも思います。
これでここにもちょっとした刺激を加えられたかな?
今回もう真砂が人目憚らずいちゃいちゃしております。
彼は自分のイメージがいまいちわかってないので、人からどう思われようと構わんのですよ。
捨吉の中の真砂のイメージが崩れてないことを祈るばかりです。
そうそう、最後の真砂の謎かけ的なもの、真砂の思惑はわかりましたか?
あんまり詳しく描くと規制まっしぐらなので、あえて書いておりません。
邪な気持ちを全開にしてお楽しみください( ̄▽ ̄)。
2019/03/25 藤堂 左近
「何だよ、どうかしたか?」
風呂から上がったところで、真砂がソファに座りながら聞いた。
じ、と真砂を見ていた深成は、その途端、にこ、と笑って、いそいそとすぐ横に座ってくる。
「えへ。真砂、何にもないときは、ちゃんとそうやって聞いてくれるよね」
「何もないときって何だよ。いつもそうだろ」
「そうだけどさ。前のときは、わらわと目、合わさなかったよ。わらわがじっと見ても、何も聞かなかった」
「あのときは特別だ。もうあんなことはない」
「うん。真砂、わかりやすいよね~」
「それ、社長にも言われたな」
ため息をつきつつ、真砂は深成の肩を抱いた。
「浮気なんか、絶対できないってよ」
「……真砂はその気になれば、どんな人でも手に入れられるもんね」
実際は結構難ありな男なので、誰でも、と言われると疑問があるのだが。
ちょっと拗ねたように言うと、真砂は肩を抱いた手に力を入れて、深成を抱き寄せる。
「そんなことよりも、またお前をあんな泣かせることになると思うと心底ぞっとする」
「うん。わらわも真砂が離れて行くとか思うと、それだけで悲しくなる」
「だから、もう結婚してしまおうかとも思うんだよな」
深成は、真砂の腕の中から、ちろ、と視線を上にあげた。
やはり真砂の言い方だと、そんな先まで考えての結婚の位置づけとも思えない。
あきの言うように、いざ結婚となればちゃんと考えてくれるだろうが、もうちょっと目先のことを言っているのではないか?
「ねぇ真砂」
「ん?」
「真砂は子供好き?」
いきなりな問いに、真砂がちょっと驚いた顔をした。
「もしかして、妊娠したのか?」
「ち、違うよっ!」
慌てて否定すると、なぁんだ、と軽く流される。
残念そうでもなければ、嬉しそうでもない。
至って普通、いつも通りだ。
が、特に焦りもない、ということは、そうなっても別に構わない、という考えがあるとも言える。
「今日はやけに何か言いたげだから、そういうことか、と思ったが」
「そうじゃなくて。昨日も真砂、結婚のこと言ってたじゃん? わらわは結婚したところで、特に何も変わらないな、と思うんだけど。もう結婚してるような生活でしょ? 真砂の言う、大きく変わるのって何かなぁ、と思ったときに、もしかして子供のことかなって」
「ああ……」
「確かに結婚して一番変わるのって、そこだよね」
「まぁ、すぐに子供を作るのであればな。でも結婚したからって、必須事項ではないぞ? 作らないって夫婦もいるし、できるかどうかもわからんし。俺は絶対子供が欲しい、とまでは思わん」
あれ? と深成は首を傾げた。
ということは、やはりそこまで考えての発言ではなかったわけだ。
「? じゃあやっぱり、大きく変わることなんてないじゃん」
何のことを言ってたんだ、と不満そうに深成が言うと、真砂は、す、と目を細めた。
そして、深成を抱き上げる。
「ていうか、お前はそこまで考えてるんだ? だったらわかりそうなもんだがな」
昨日と同じ、何か含んだ邪悪な笑み。
あれ、何かまた真砂を誘うようなこと言った? と深成が若干焦っているうちに、寝室のベッドに放り投げられる。
「お前は子供が欲しいのか?」
軽くキスをしながら、真砂が言う。
「えーっと。実はまだよくわかんない。でもやっぱり、結婚したら考えるかなぁ」
「そうだな。ま、とりあえずは自然の流れに任せるが」
パジャマを脱がされながら、ふと深成は気が付いた。
「そ、そういうことっ? 真砂、結婚したら、子供ができるかどうかは流れに任せるって……」
「そういうことだ」
にやりと笑い、真砂は自分も服を脱ぐと、深成の胸に顔を埋めた。
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
惟道登場。
とうとう現代版にも出張ってくるほど何気に人気の惟道ですが。
難しい!!
この浮世離れっぷりは現代社会ではマッチしないというか。
……何だろう、何かもう空気感が違うんですよね。
惟道の、あの独特の雰囲気は、現代社会では表現できません。
案外惟道単体では何事も起こらないと思います。
知らず周りに影響を及ぼす。
書いててつくづく思ったのが、惟道と真砂は似てる、ということ。
真砂の酷い版ですよ。
ということは左近とも似てるということで、なるほど元々惟道は左近でしたからね( ̄▽ ̄)。
で、何かあまりに大したことが起こらないので変に長くなったんですけど、長くなったわりにはやっぱり何も起こってないというね。
けど穏やかすぎるあきと捨吉のところに、若干波風を立てたようにも思います。
これでここにもちょっとした刺激を加えられたかな?
今回もう真砂が人目憚らずいちゃいちゃしております。
彼は自分のイメージがいまいちわかってないので、人からどう思われようと構わんのですよ。
捨吉の中の真砂のイメージが崩れてないことを祈るばかりです。
そうそう、最後の真砂の謎かけ的なもの、真砂の思惑はわかりましたか?
あんまり詳しく描くと規制まっしぐらなので、あえて書いておりません。
邪な気持ちを全開にしてお楽しみください( ̄▽ ̄)。
2019/03/25 藤堂 左近