小咄
とあるmira商社での、意外な残業事情
【キャスト】
課長:真砂 派遣事務員:深成 新入社員:捨吉
※夜香花×妖幻堂『とあるベテラン営業事務員・千代の研修体験』の続編です※
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
「ああああ……やっと終わったぁ!!」
夜十時。
フロアもすでに、照明は一角だけになったオフィスビルで、深成はべたっと今の今まで叩いていたキーボードの上に倒れ込んだ。
その横で、今しがたプリンタが吐き出した書類に、真砂が目を落とす。
「……よし」
ばさ、と書類を置き、とん、と紙の端を指差す。
「あとはここに社印を押して終わりだ」
真砂に言われ、深成は捨吉が差し出した印鑑ケースの中から、いかめしい社印を取り出す。
ぽんぽんと朱肉に叩き付け、えいやっと体重をかけて紙に押しつけた。
そろ、と離すと、美しく押印された書類が出来上がった。
「うん、綺麗だ。お前はハンコ押すの、上手だねぇ」
捨吉が、社印をしまいながら褒めてくれる。
「じゃ、印鑑しまってきますね」
そう言って捨吉が印鑑ケースをしまいに去り、深成はようやく、PCの電源を落とそうと、隣にいる真砂を窺った。
真砂は最終チェックをしている。
ここで万が一ミスが見つかったらおしまいだ。
一通り書類に目を通し、とん、と真砂は書類を机で揃えた。
「落としてよし」
ちょい、と顎で深成のPCを指す。
まるで犬扱いである。
だが深成は、ほっと息をついた。
「良かったぁ~」
心の底から言い、PCを落とす。
そのとき、不意に真砂が手を伸ばした。
「ご苦労。よくやったな」
くしゃ、と深成の髪を乱すように、頭を撫でる。
目を大きく見開き、深成は真砂を見た。
「遅くなったな。帰るぞ」
短く言い、自分のデスクを片付ける。
は、と我に返り、深成も慌ててデスクを片付けた。
当然ながら、ビルの外はもう人影もまばらだ。
「はぁ~、疲れた~」
大きくため息をついた途端、深成のお腹が、くるるる、と鳴いた。
そういえば、夕ご飯は結局真砂が恵んでくれたおにぎり一つだけだ。
すでに消化している。
「あはは。そういえば、腹減りましたねぇ。課長、飯食いに行きませんか?」
笑いながら捨吉が言う。
真砂は、ひょいと手を挙げて、タクシーを止めた。
「しょうがないな。そんな腹鳴らしてる奴連れてるのも恥ずかしいしな」
「しょうがないじゃんっ!」
きぃきぃ喚く深成と、宥める捨吉を連れ、真砂はタクシーに乗り込んだ。
課長:真砂 派遣事務員:深成 新入社員:捨吉
※夜香花×妖幻堂『とあるベテラン営業事務員・千代の研修体験』の続編です※
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
「ああああ……やっと終わったぁ!!」
夜十時。
フロアもすでに、照明は一角だけになったオフィスビルで、深成はべたっと今の今まで叩いていたキーボードの上に倒れ込んだ。
その横で、今しがたプリンタが吐き出した書類に、真砂が目を落とす。
「……よし」
ばさ、と書類を置き、とん、と紙の端を指差す。
「あとはここに社印を押して終わりだ」
真砂に言われ、深成は捨吉が差し出した印鑑ケースの中から、いかめしい社印を取り出す。
ぽんぽんと朱肉に叩き付け、えいやっと体重をかけて紙に押しつけた。
そろ、と離すと、美しく押印された書類が出来上がった。
「うん、綺麗だ。お前はハンコ押すの、上手だねぇ」
捨吉が、社印をしまいながら褒めてくれる。
「じゃ、印鑑しまってきますね」
そう言って捨吉が印鑑ケースをしまいに去り、深成はようやく、PCの電源を落とそうと、隣にいる真砂を窺った。
真砂は最終チェックをしている。
ここで万が一ミスが見つかったらおしまいだ。
一通り書類に目を通し、とん、と真砂は書類を机で揃えた。
「落としてよし」
ちょい、と顎で深成のPCを指す。
まるで犬扱いである。
だが深成は、ほっと息をついた。
「良かったぁ~」
心の底から言い、PCを落とす。
そのとき、不意に真砂が手を伸ばした。
「ご苦労。よくやったな」
くしゃ、と深成の髪を乱すように、頭を撫でる。
目を大きく見開き、深成は真砂を見た。
「遅くなったな。帰るぞ」
短く言い、自分のデスクを片付ける。
は、と我に返り、深成も慌ててデスクを片付けた。
当然ながら、ビルの外はもう人影もまばらだ。
「はぁ~、疲れた~」
大きくため息をついた途端、深成のお腹が、くるるる、と鳴いた。
そういえば、夕ご飯は結局真砂が恵んでくれたおにぎり一つだけだ。
すでに消化している。
「あはは。そういえば、腹減りましたねぇ。課長、飯食いに行きませんか?」
笑いながら捨吉が言う。
真砂は、ひょいと手を挙げて、タクシーを止めた。
「しょうがないな。そんな腹鳴らしてる奴連れてるのも恥ずかしいしな」
「しょうがないじゃんっ!」
きぃきぃ喚く深成と、宥める捨吉を連れ、真砂はタクシーに乗り込んだ。