小咄
そんなことをつらつら考えていると、がちゃりと真砂が浴室から出てきた。
「ちょーーーっと課長っ! ちゃんと服着て来てよぅっ!!」
思わず布団を引き上げて喚く深成に、真砂は冷たい視線を投げた。
「脱衣所がないのに、どこで着ろというんだ」
トランクス一枚の真砂が、憮然と言う。
肩にかけていたバスタオルで、がしがしと髪を拭きながら、どっかとベッドの端に腰掛けた。
そして、ちらりと深成を見る。
「……何時だ?」
「あ」
手に持ったままだった腕時計を見る。
時間を見るために時計を手に取ったというのに、全然関係ないことばっかり考えていた。
「五時。……え、まだそんな時間なの」
まさか夕方ではあるまい。
深成は、こてんとベッドに転がった。
「なぁんだ。えらく早く起きちゃったなぁ」
ころころと布団と戯れる深成を、真砂は冷めた目で見る。
全くこの子供は、今の状況がわかっているのだろうか。
真砂は身体を反転させると、転がっている深成の手首を掴んだ。
そのままベッドに押しつけ、上から覗き込む。
ここまでされて初めて、深成は驚いたように目を見開いた。
「かっ課長っ……! え~とえ~と」
ほとんど裸の真砂に、ベッドに押し倒されている状態だ。
いくらお子様な深成でも、このままでは何が起こるかわかるだろう。
「かかかか課長~。あのあのっわ、わらわはまだその……。いえあの、迷惑かけたことは申し訳なく思っとりますっ。でもでもでも、あのっそのっ。身体で返すほど、わらわはまだ……」
最早何を言っているのかわからない。
焦りすぎて頭が熱い。
パニック状態の深成をしばらく見下ろしていた真砂は、顔を背けた。
吹き出しそうになるのを堪える。
何とか堪えてから、真砂はあえてそのままの状態で、身体を倒した。
真砂の素肌が、深成の身体に触れる。
「ひいいぃぃぃっ!!」
情けない悲鳴を上げると同時に、瞬間的に深成の身体が、びびくんっ! と震えた。
「……よいせっと」
そんな深成とは対照的に、平坦な声で、真砂は腕を伸ばして、深成の頭のほうに脱いであったTシャツを取った。
そして身体を起こすと、さっさとそれを着る。
「……」
寝転がったまま固まっている深成を気にもせず、脱いであった服を着ると、何事もなかったかのように振り向いた。
「いつまで寝てる。ほら、いい加減に、それ寄越せ」
ちょい、と手を出す。
気づけば深成は、手に真砂の腕時計を握りしめたままだった。
さっきの行動は、ただTシャツを取るためだったのだろうか、いや、わらわをからかうために、わざわざあんな前置きしたんだ! とようやく気づき、深成は、ぎっと真砂を睨むと、がばっと起き上がった。
そして、差し出された真砂の手の平に、ばしっと腕時計を叩き付ける。
「何を怒ってるんだか」
ふふん、と馬鹿にしたように笑う真砂に、もう一度、ぎ、と鋭い目を向け、だが深成は慌てて自分の髪の毛を押さえた。
そういえば、目覚めてから全然自分のことを気にしてなかった。
顔も洗ってないし、髪の毛も起きたままだ。
「ちょーーーっと課長っ! ちゃんと服着て来てよぅっ!!」
思わず布団を引き上げて喚く深成に、真砂は冷たい視線を投げた。
「脱衣所がないのに、どこで着ろというんだ」
トランクス一枚の真砂が、憮然と言う。
肩にかけていたバスタオルで、がしがしと髪を拭きながら、どっかとベッドの端に腰掛けた。
そして、ちらりと深成を見る。
「……何時だ?」
「あ」
手に持ったままだった腕時計を見る。
時間を見るために時計を手に取ったというのに、全然関係ないことばっかり考えていた。
「五時。……え、まだそんな時間なの」
まさか夕方ではあるまい。
深成は、こてんとベッドに転がった。
「なぁんだ。えらく早く起きちゃったなぁ」
ころころと布団と戯れる深成を、真砂は冷めた目で見る。
全くこの子供は、今の状況がわかっているのだろうか。
真砂は身体を反転させると、転がっている深成の手首を掴んだ。
そのままベッドに押しつけ、上から覗き込む。
ここまでされて初めて、深成は驚いたように目を見開いた。
「かっ課長っ……! え~とえ~と」
ほとんど裸の真砂に、ベッドに押し倒されている状態だ。
いくらお子様な深成でも、このままでは何が起こるかわかるだろう。
「かかかか課長~。あのあのっわ、わらわはまだその……。いえあの、迷惑かけたことは申し訳なく思っとりますっ。でもでもでも、あのっそのっ。身体で返すほど、わらわはまだ……」
最早何を言っているのかわからない。
焦りすぎて頭が熱い。
パニック状態の深成をしばらく見下ろしていた真砂は、顔を背けた。
吹き出しそうになるのを堪える。
何とか堪えてから、真砂はあえてそのままの状態で、身体を倒した。
真砂の素肌が、深成の身体に触れる。
「ひいいぃぃぃっ!!」
情けない悲鳴を上げると同時に、瞬間的に深成の身体が、びびくんっ! と震えた。
「……よいせっと」
そんな深成とは対照的に、平坦な声で、真砂は腕を伸ばして、深成の頭のほうに脱いであったTシャツを取った。
そして身体を起こすと、さっさとそれを着る。
「……」
寝転がったまま固まっている深成を気にもせず、脱いであった服を着ると、何事もなかったかのように振り向いた。
「いつまで寝てる。ほら、いい加減に、それ寄越せ」
ちょい、と手を出す。
気づけば深成は、手に真砂の腕時計を握りしめたままだった。
さっきの行動は、ただTシャツを取るためだったのだろうか、いや、わらわをからかうために、わざわざあんな前置きしたんだ! とようやく気づき、深成は、ぎっと真砂を睨むと、がばっと起き上がった。
そして、差し出された真砂の手の平に、ばしっと腕時計を叩き付ける。
「何を怒ってるんだか」
ふふん、と馬鹿にしたように笑う真砂に、もう一度、ぎ、と鋭い目を向け、だが深成は慌てて自分の髪の毛を押さえた。
そういえば、目覚めてから全然自分のことを気にしてなかった。
顔も洗ってないし、髪の毛も起きたままだ。