小咄
とある中学校の体育祭:午前
【キャスト】
教師:真砂・六郎
生徒:深成・千代・あき
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
体育祭前日。
職員室に駆け込んできた深成は、奥に座る真砂のところに駆け寄った。
「先生〜。ほらっ見てこれ」
ば、と手に持った布を広げる。
その途端、真砂の眉間に、深々と皺が寄った。
「……何だよ、それは」
「明日のクラス対抗リレーの応援旗だよ〜」
「やめてくれ」
「何でさ、皆の愛が詰まってんのに」
言いつつ、ほれほれ、と深成は大きな布を振る。
白い大きな布には、でかでかと『2ーB 真砂LOVE』と書かれている。
そしてハートがいっぱい。
「可愛いでしょ? 満場一致で、このデザインになったんだよ」
真砂が頭を抱えて渋い顔をした。
ここは私立の女子中学校だ。
若い男の先生はモテる。
中でも真砂は群を抜いた人気者だ。
生徒はもちろん、他の女教師にもモテるのだが。
「阿呆かお前は。そんなもん、全校生徒の前で振られる身にもなれ」
素っ気なく言う。
女子にモテることなど、何とも思っていない冷たさだ。
ぶぅ、と頬を膨らませる深成は、真砂のクラスの生徒。
どうやら体育祭実行委員らしい。
「いいじゃん〜。やる気出るでしょ?」
「気を削がれるわ。何の罰ゲームなんだ」
きゃんきゃんと二人が言い合っていると、真砂の前の席にいる、隣のクラスの担任・六郎が、深成に向かって声をかけた。
「凄いね。それ、深成ちゃんが作ったの?」
「うんっ! 六郎先生のところも、旗作ってるの?」
にこにこと、深成は『真砂LOVE』を六郎に見せる。
少しだけ、六郎が微妙な表情になった。
「さぁ、どうかな。作ってるとしても、普通だと思うよ」
「六郎先生のクラスの実行委員は、あきちゃんだったよね。どんな案出したんだろ」
「え、その旗の文言は、深成ちゃんが考えたのかい?」
六郎が身を乗り出し、旗を指差す。
思いっきり彼の指が示しているのは、『LOVE』の部分だ。
が、特に深成は気にすることなく、大きく頷いた。
「そうだよ。だって皆、真砂先生好きだからさ」
さらっと言ったことに、六郎は何故か、ひく、と頬を引き攣らせた。
その様子を、真砂が少し目を細めて見る。
「そ、そんな言葉を、中学生が本人に対して振るのはどうかなぁ……」
初めに褒めたわりには、この恥ずかしい言葉を深成が考えたと聞いた途端、否定する。
そんな六郎に、深成はきょとん、とした顔を向けた。
「ええ? 何で?」
「い、いやだって……。意味わかってる?」
「六郎先生っ! わらわのこと、馬鹿だと思ってない? ちゃんとわかってるよ!」
「う、うん、まぁそうだろうけど。ほ、ほら、真砂先生も嫌がってるじゃないか」
これではまるで、深成の気持ちを真砂が嫌がっていると言っているようだ。
深成は、がぁん、とショックを受けた。
教師:真砂・六郎
生徒:深成・千代・あき
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
体育祭前日。
職員室に駆け込んできた深成は、奥に座る真砂のところに駆け寄った。
「先生〜。ほらっ見てこれ」
ば、と手に持った布を広げる。
その途端、真砂の眉間に、深々と皺が寄った。
「……何だよ、それは」
「明日のクラス対抗リレーの応援旗だよ〜」
「やめてくれ」
「何でさ、皆の愛が詰まってんのに」
言いつつ、ほれほれ、と深成は大きな布を振る。
白い大きな布には、でかでかと『2ーB 真砂LOVE』と書かれている。
そしてハートがいっぱい。
「可愛いでしょ? 満場一致で、このデザインになったんだよ」
真砂が頭を抱えて渋い顔をした。
ここは私立の女子中学校だ。
若い男の先生はモテる。
中でも真砂は群を抜いた人気者だ。
生徒はもちろん、他の女教師にもモテるのだが。
「阿呆かお前は。そんなもん、全校生徒の前で振られる身にもなれ」
素っ気なく言う。
女子にモテることなど、何とも思っていない冷たさだ。
ぶぅ、と頬を膨らませる深成は、真砂のクラスの生徒。
どうやら体育祭実行委員らしい。
「いいじゃん〜。やる気出るでしょ?」
「気を削がれるわ。何の罰ゲームなんだ」
きゃんきゃんと二人が言い合っていると、真砂の前の席にいる、隣のクラスの担任・六郎が、深成に向かって声をかけた。
「凄いね。それ、深成ちゃんが作ったの?」
「うんっ! 六郎先生のところも、旗作ってるの?」
にこにこと、深成は『真砂LOVE』を六郎に見せる。
少しだけ、六郎が微妙な表情になった。
「さぁ、どうかな。作ってるとしても、普通だと思うよ」
「六郎先生のクラスの実行委員は、あきちゃんだったよね。どんな案出したんだろ」
「え、その旗の文言は、深成ちゃんが考えたのかい?」
六郎が身を乗り出し、旗を指差す。
思いっきり彼の指が示しているのは、『LOVE』の部分だ。
が、特に深成は気にすることなく、大きく頷いた。
「そうだよ。だって皆、真砂先生好きだからさ」
さらっと言ったことに、六郎は何故か、ひく、と頬を引き攣らせた。
その様子を、真砂が少し目を細めて見る。
「そ、そんな言葉を、中学生が本人に対して振るのはどうかなぁ……」
初めに褒めたわりには、この恥ずかしい言葉を深成が考えたと聞いた途端、否定する。
そんな六郎に、深成はきょとん、とした顔を向けた。
「ええ? 何で?」
「い、いやだって……。意味わかってる?」
「六郎先生っ! わらわのこと、馬鹿だと思ってない? ちゃんとわかってるよ!」
「う、うん、まぁそうだろうけど。ほ、ほら、真砂先生も嫌がってるじゃないか」
これではまるで、深成の気持ちを真砂が嫌がっていると言っているようだ。
深成は、がぁん、とショックを受けた。