小咄
とあるホストクラブでの接客事情
【キャスト】
No.1ホスト:真砂 オーナー:清五郎 新人ホスト:捨吉
客:ミラ子さん・ラテ子さん
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
とある町の、飲み街の一画。
小綺麗なビルの6階に、エレベーターが止まった。
チン、とレトロな音を響かせてドアが開くと、そこは煌びやかな大人の世界。
「これは、ようこそ。お久しぶりですね、ミラ子社長」
きっちりとした黒服に身を包んだ清五郎が、優雅に手を差し出す。
慣れたように、その手に己の手を乗せ、ミラ子社長はにこりと艶やかに笑った。
「おんや、オーナー自らお出迎えしてくれるか。嬉しいねぇ」
「もちろん。ミラ子様のことは、首を長くしてお待ちしておりましたもので」
「おほほ。上手いのぅ。そうそう、この子はラテ子や。うちの秘書やさかい、可愛がったってや」
言いながら、ミラ子社長は、つい、と後ろに控えるラテ子を指した。
物珍しそうに店内を見回していたラテ子に微笑みかけ、清五郎は奥に向かって指を鳴らした。
たたた、と一人の若者が駆け寄ってくる。
「捨吉。ラテ子さんのお相手を頼む。失礼のないようにな」
「はいっ」
初々しく返事をするのは、まだまだ若造だ。
ホストらしさも身についていない。
「おや、新人かえ?」
「捨吉と申します。よろしくぅ」
へら、と笑う。
愛嬌はあるが、どうも軽い感じだ。
ミラ子社長は、ちっちっと指を振った。
「まだまだやな。うちは阿呆なホストは嫌いやで。ホストいうてもな、ちゃらちゃらしてりゃええんちゃうんや。どんなお客でも骨抜きに出来るぐらいなホストっちゅーのは、そんなホストホストしてないもんや」
わかりやすいんだか、わかりにくいんだか。
だが捨吉は、ふむふむ、と素直に頷いた。
「なかなか可愛い子やな」
素直な態度がミラ子社長のお気に召したようで、そのまま捨吉はヘルプにつく。
席につくと、これまた当たり前のように、ミラ子社長の手を、清五郎が用意したお手拭きで綺麗に拭いた。
「社長〜。手ぐらい、自分で拭きましょうよぅ」
ちょっと驚いたように、ラテ子が言う。
が、ミラ子社長は扇を口元にあてて、高笑いした。
「何を言うてんのや。ここは居酒屋ちゃうんやで。金が全ての、王様ゲームや」
「そう言ってしまうと、夢がないですねぇ」
清五郎が苦笑いする。
そして、メニューを示した。
ちなみにずっと、清五郎はミラ子社長の少し横、ソファの前に跪いたままだ。
「そうやなぁ。今日はラテ子もおるし、ドンペリいっとくか!」
「ピンドンですか?」
「清五郎〜。うちを誰やと思ってんの。ピンドンやなんて、そんなケチ臭いこと言いまへん」
ちちち、と指を振りつつ、ミラ子社長は不敵に笑う。
ラテ子が驚いて、メニューを見た。
ピンドンの値段、15万円也。
が、どうもそれでも、ホストクラブでは安い酒のようだ。
No.1ホスト:真砂 オーナー:清五郎 新人ホスト:捨吉
客:ミラ子さん・ラテ子さん
・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆・:・★・:・☆
とある町の、飲み街の一画。
小綺麗なビルの6階に、エレベーターが止まった。
チン、とレトロな音を響かせてドアが開くと、そこは煌びやかな大人の世界。
「これは、ようこそ。お久しぶりですね、ミラ子社長」
きっちりとした黒服に身を包んだ清五郎が、優雅に手を差し出す。
慣れたように、その手に己の手を乗せ、ミラ子社長はにこりと艶やかに笑った。
「おんや、オーナー自らお出迎えしてくれるか。嬉しいねぇ」
「もちろん。ミラ子様のことは、首を長くしてお待ちしておりましたもので」
「おほほ。上手いのぅ。そうそう、この子はラテ子や。うちの秘書やさかい、可愛がったってや」
言いながら、ミラ子社長は、つい、と後ろに控えるラテ子を指した。
物珍しそうに店内を見回していたラテ子に微笑みかけ、清五郎は奥に向かって指を鳴らした。
たたた、と一人の若者が駆け寄ってくる。
「捨吉。ラテ子さんのお相手を頼む。失礼のないようにな」
「はいっ」
初々しく返事をするのは、まだまだ若造だ。
ホストらしさも身についていない。
「おや、新人かえ?」
「捨吉と申します。よろしくぅ」
へら、と笑う。
愛嬌はあるが、どうも軽い感じだ。
ミラ子社長は、ちっちっと指を振った。
「まだまだやな。うちは阿呆なホストは嫌いやで。ホストいうてもな、ちゃらちゃらしてりゃええんちゃうんや。どんなお客でも骨抜きに出来るぐらいなホストっちゅーのは、そんなホストホストしてないもんや」
わかりやすいんだか、わかりにくいんだか。
だが捨吉は、ふむふむ、と素直に頷いた。
「なかなか可愛い子やな」
素直な態度がミラ子社長のお気に召したようで、そのまま捨吉はヘルプにつく。
席につくと、これまた当たり前のように、ミラ子社長の手を、清五郎が用意したお手拭きで綺麗に拭いた。
「社長〜。手ぐらい、自分で拭きましょうよぅ」
ちょっと驚いたように、ラテ子が言う。
が、ミラ子社長は扇を口元にあてて、高笑いした。
「何を言うてんのや。ここは居酒屋ちゃうんやで。金が全ての、王様ゲームや」
「そう言ってしまうと、夢がないですねぇ」
清五郎が苦笑いする。
そして、メニューを示した。
ちなみにずっと、清五郎はミラ子社長の少し横、ソファの前に跪いたままだ。
「そうやなぁ。今日はラテ子もおるし、ドンペリいっとくか!」
「ピンドンですか?」
「清五郎〜。うちを誰やと思ってんの。ピンドンやなんて、そんなケチ臭いこと言いまへん」
ちちち、と指を振りつつ、ミラ子社長は不敵に笑う。
ラテ子が驚いて、メニューを見た。
ピンドンの値段、15万円也。
が、どうもそれでも、ホストクラブでは安い酒のようだ。