小咄
「さぁでは! ゴールドシャンパンタワー!! ミラ子様、ありがとうございます!!」

 清五郎が店中に叫び、他の席からホストが集まってくる。
 その中で真砂が、ボトルの栓を抜いた。
 
 ラベルを見せつけるように掲げてから、タワーに注ぐ。
 ホストたちから、シャンパンコールが上がった。

「ミラ子。シャンパンタワーだったら、一本じゃ足りねぇよな。何本いっとく?」

 真砂がタワーに黄金を注ぎながら言う。
 ラテ子の目には、まさに黄金。
 金が落ちていっているようだ。

 ゴールドは確かにプラチナよりはランクが落ちるが、上から二番目。
 一本50万円也。

---ああああ……。百円玉が……湯水のように流れ落ちていくわ……---

 くらくらと目眩のする頭を押さえながら、ラテ子は流れ落ちる黄金を見つめた。
 札でなく百円玉で考える辺りが可愛らしい。
 色的には五円玉だが、さすがに五円玉では貧乏臭い。

 そんな可愛らしいラテ子の前で、ミラ子社長は、ふふんと扇を振った。

「真砂。うちが何でランク落としたか、わかってんの? ゴールドのほうが、見栄えがええやろ。もちろんランク落としたかて、金はケチりまへん! さー、皆、飲みや! じゃんじゃん空け〜や! 一本二本やないで!」

 言うなり、ミラ子社長は傍らにあった新たなボトルを、景気良く空けた。
 しぱーん、と良い音がし、栓が飛んでいく。

「ありがとうございます! ご馳走になります!」

「さすがミラ子様! 頂きます!」

 やんややんやと囃し立てるホストたちにじゃんじゃんシャンパンを振る舞うミラ子社長を、ラテ子は口をあんぐり開けて見つめた。
 さすがミラ子社長。
 金の使い方が半端ない。

「さすがだな。やっぱりミラ子は、俺のエースだぜ」

 ふと気付くと、真砂がミラ子社長に寄り添っている。
 ミラ子社長は勝ち誇ったように笑うと、手に持っていたグラスを、ぐいっと空けた。
 そしてソファに座ると、ふんぞり返って真砂見る。

「せやろ? じゃあ、うちのお願い聞いて貰おうかな」

「お願い?」

「エースの願いは、聞くもんやろ?」

 そう言って、ミラ子社長は、かたんとテーブルの上のグラスを倒した。
 ハイヒールに、プラチナがかかる。

「さぁ真砂ぉ〜。跪いて、うちの足拭いて〜」

 おほほほほ、と悪魔のように高笑いする。
 前でラテ子が、若干引いた。
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