傷ついてもいい
「ただいま、佳奈」

「おかえり」

玄関先で軽くキスを交わすのも、習慣になっていた。

そして二人で、今日あった出来事を話し、お酒を飲む。

楽しい時間だった。


「…でさ、俺、休み取れるからさ」

「あ、うん、私も明日から1週間」

夏休みに彼氏と旅行。

そんな当たり前のことに、佳奈は心が踊った。

普通の幸せを手にいれている。

少し怖いような気持ちになった。

斎藤に肩を抱かれながら、それをどこか客観視している。

もう、戻れないし、戻りたくないと思っていた。
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