傷ついてもいい
病院の中は、冷んやりとして気持ちが良かった。佳奈は、少し心を落ち着かせる。

面会時間には、まだ少し余裕があったので、とりあえず直己が入院している階まで上がり、静かな廊下をゆっくり歩いてみた。

もし、直己が重大な病気だったらどうしよう。

お母さんも入院してるっていうのに。誰に相談すればいいんだろう。

離婚したっていう、元お父さん?そんなのどうやって調べればいいんだろう。
親戚とか?お母さんの兄弟とか?

色々考えているうちに、直己の病室の近くまで来てしまった。


…あれ?

『相澤直己』

と書かれたネームプレートの部屋に若い女の子が入っていった。

…誰だろう…。もしかして直己の彼女?

佳奈は、少しだけ引き戸を開け、中を、覗こうとした。

「どちら様ですか?」

すうっとドアが開いて、今入っていった女の子が顔を出した。


「あ!すいません!私、龍皇大学の事務の者でして、その、大学に連絡が来まして、それで」

「今、相澤くん寝てるみたいなんで、外でいいですか?」

「あ、はい…」

おそらく直己より少し歳上だろう。

彼女は、静かにドアを閉めると佳奈を談話室に誘った。

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