傷ついてもいい
次の日。

綺麗な秋晴れの空の下、バタバタと用意して四人で車に乗り込んだ。

「あと一個クロワッサン食べたかったよお」

「何言ってんの!あんまり食べたらほんとにウエディングドレス入んなるよ」

「あとでまたサンドイッチかなんか買ってあげるから」

女三人でわいわい騒ぐ中、父親は信号待ちで空を見上げている。

「いい天気だなあ」

そのしみじみとした声に、佳奈は、急にさみしくなってきた。

「ほんとだね。晴れて良かった」

佳奈は父親の背中を見ながら、少しその気持ちに寄り添う。

離れて住んでも家族だけれど、やっぱりみんなで過ごす時間は、成長とともに短くなってくる。

歳を取るというのは、そういう人生のやるせなさみたいなものを受け入れていくことなんだ、と佳奈は思っていた。






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