傷ついてもいい
「それから、毎日、佳奈さん探して、事務所で見つけた時は、嬉しくてさあ。用事もないのに毎日喋りに行って、怒られてた」

「そうそう。田中女史が、仕事の邪魔しないでって」

「でも、俺、あれからちゃんと友達も作れるようになって、大学楽しいなあって思えるようになったんだ」

「そうかぁ、私、いいことしたね」

「ほんとだよ」

あはは、と二人で笑った。


「でさ、佳奈さんが側にいてくれたら、何でもできる気がしたんだよね」

「そっか、それでうちに来たいって?」

「うん。佳奈さんが待ってくれてる部屋に帰れたら、なんか頑張れる気がしたんだ」

佳奈は、知らないうちに自分が直己を支えていたことが、嬉しかった。

それを聞いただけで心が満たされてゆく。

「ありがとね。そんな風に言ってくれて」

佳奈は、静かに言った。
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