傷ついてもいい
終章
「ママー！」

幼稚園バスから降りてくる娘の姿を確認して、佳奈は、おかえり、と声をかける。

娘は、春から年長組になった。

「今日は、何して遊んだの？」

「えーとねー、お絵描きして、あと太一くんとね、ブロックでね」

娘のたどたどしい報告を笑顔で聞いていると後ろから声をかけられた。

「斎藤さん」

「ああ、こんにちは」

同じマンションの噂好きの奥さんが手を振っている。

「ねえねえ、聞いた？中井さんのこと」

また噂話か、と佳奈は少しうんざりする。

「ううん、知らない。中井さんどうかした？」

同じマンションの若くて大人しい奥さん、という印象しかない。

「不倫、してるんだって！」

「へえ、そうなんだ！」

佳奈は、一応興味があるフリをした。







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