傷ついてもいい
「ただいま佳奈さん。あれ?呑んでんの?珍しいね」

直己は、さすがに丸一日仕事だったせいか疲れた顔をしている。

「おかえり。お疲れさま。直己も呑む?」

佳奈は、ビールを取りに冷蔵庫に向かった。

「ああ、じゃ貰おうかな。明日は、午後からだし」

「了解、はい、どうぞー」


斎藤の家からずっと呑んでいるせいかだいぶ酔いが回ってきていた。

「今日は、店、忙しかった?」

「うん、まあ、土曜日だしねえ。遅くまでお客さんがいたし。それに」

「ん?」

「何回も誘われて、断るのに疲れた」

直己は、店でしょっちゅう声をかけられていた。

若い女のコならまだしも、40過ぎのオバサマや、たまに男の人からナンパされることもあるらしい。

「そっか。お疲れ」

佳奈は、笑って済まそうと思ったが、酔いのせいで、つい余計な話をしてしまった。
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