傷ついてもいい
結局、そのままソファで眠ってしまい、明け方に目を覚ますと、毛布が掛けられてあった。

横で布団を敷いて直己が眠っている。

斎藤の部屋に行く前に、取り入れたから、きっと布団は、フワフワして気持ちいいはずだと佳奈は、変なことに自信をもった。

にしても。

「頭、いた…」


薬を飲むために起き上がってキッチンに向かう。

「佳奈さん」

「あ、ごめん。起こした?」

直己は、むくりと起き上がるとキッチンまでやってきた。

「これ、少ないけど」

「え?なにこれ」

直己が一万円札を三枚差し出した。

「一応、家賃」

直己は、無理やりにそれを佳奈に渡し、横のテーブルについた。

「俺、反省したんだ。佳奈さんに世話になってんのに子供扱いすんな、なんて。笑っちゃうよね」

「そんな…」

佳奈は、寂しくなった。直己が大人になって佳奈から離れていってしまう気がする。

「こんなのいらないよ」

「ごめん、少なくて不満だろうけど」

直己は、少し照れて笑った。

「私、ほんとに直己のこと子供だなんて思ってないから」

「わかってる。俺が勝手にすねた」

「私の方が、よっぽど子供だよ」

そう言いながら直己の前に座った。





< 39 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop