傷ついてもいい
「花村さんは、恋人いらっしゃるんですか」

斎藤は、エレベーターの数字を目で追いながら聞いてきた。

「あ、いないです。残念ながら」

「そうなんだ。意外だなあ」

「え、意外ですか?」

「うん。凄く優しくて魅力的な人だと思ったから」

ストレートに褒められて、佳奈は、困ってしまった。

「いやあ、そんなこと言われたのはじめてですよ」

チン、とエレベーターが一階に着き、二人でゴミを捨てに行った。

「すいません、持っていただいちゃって」

「いえいえ、このくらい」

斎藤は、目尻に皺を寄せて優しく笑った。

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