傷ついてもいい
しばらく雑談をして、週末デートをする約束をした。

『じゃあね、おやすみ』

斎藤が優しく言ってくれて、佳奈は胸がときめく。

「おやすみなさい」

幸せな気持ちで電話を切った。

電話して良かった、と佳奈は心から思った。

誰かに想われる幸せなんて、もう二度とないと思っていた。

…斎藤さん…私を幸せにしてくれますか?

頭の中で斎藤との結婚生活を夢にみてみた。
銀行員だから、きっと毎晩帰りも遅いだろうけれど、笑顔で迎えられるかな。

…おかえりなさい…

「かなさあん、たっだいまあ!」

可愛いエプロンをした自分を妄想したところで、直己が帰ってきて、現実に引き戻された。

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