傷ついてもいい
お昼にイタリアンに行き、その後海まで行った。

こんな風にデートするのは、本当に久しぶりで、 佳奈は、斎藤が差し出してくれた手を繋ぐのさえ、少し緊張した。

「佳奈さん」

「ん?」

「今日は、来てくれてほんとに嬉しかった。ありがとう」

浜辺を歩きながら、斎藤が言う。

「なんで?私から誘ったみたいなものなのに」

佳奈がにっこりと笑うと、斎藤は繋いだ手にきゆっと力を込めた。

「俺と、付き合ってくれますか?」

少し緊張した面持ちで斎藤が言う。佳奈は、嬉しくてにっこりと笑った。

「うん。私なんかで良ければ」

「佳奈さん」

斎藤は、佳奈をそっと抱き寄せた。

この間、抱きしめられた時とは全く違う満たされた気持ちに、佳奈は忘れかけていた幸せの感覚を思い出していた。


< 62 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop