傷ついてもいい
10時を15分ほど過ぎて、車はマンションに着いた。

佳奈は、冷静を装いながら、エレベーター前で斎藤と別れ、早足に自分の部屋へ向かう。

案の定、直己がドアの前で三角座りをして頭を抱えていた。

「直己、ごめん!」

佳奈は謝って、直己の肩を揺すると、ぐらりとこちらに体重がかかってきた。

「直己?」

「佳奈さあん、頭、いたい」

「え?」

額に手を当てると随分と熱い。

「ちょっと、大丈夫?」

佳奈は、あわてて鍵を開け、直己を支えるようにして中に入った。



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