傷ついてもいい
布団に寝かせ、熱を測ると38度だった。

とりあえず薬を飲ませ、濡れたタオルで額を冷やしてやる。

「ごめんね、だいぶん待った?電話くれれば良かったのに」

直己の髪を撫でながら言う。

「うん、でも、デートの邪魔しちゃ悪いと思って」

直己は、熱があるのにヘラヘラと笑いながら言った。

「え?なんで、知ってんの?」

佳奈は驚いた。

「そりゃわかるよ。あれだけ昨日、洋服いっぱい出してきて、どれがいい?って聞いてこられたら、さ」

「そっか。直己は、なんでもわかっちゃうんだね」

「佳奈さんがわかりやすいんだよ」

直己は、力無く笑う。

「ごめんね、もう寝て」

「ん」

しばらくして直己は、静かに寝息をたてはじめた。

佳奈は、何度もタオルを替えては、直己の額の汗を拭う。

ごめんね、直己。辛い思いさせて。私のせいだね。

佳奈は、直己が愛おしくて泣きそうだった。

直己のいない生活なんて考えられないけれど、このままではいけないことも嫌というほど感じていた。
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