傷ついてもいい
「ごめんね」

むぅっとしていると、直己が顔を覗きこんできた。

その姿が可愛くて、つい顔が緩む。

「もう、いいよ」

佳奈は、ふぅ、とため息をついた。

最後の最後まで振り回されっぱなしだ。

気を抜いていると、直己が手を繋いできた。

…わ…

心で動揺する。
けど、なんてことないって顔を作った。

「もう、こんな風に一緒に帰るのも最後かもねえ」

直己は、繋いだ手をぶんぶんと振りながら言う。

「…そうだね」

佳奈は、泣きそうになりながら、やっと言った。
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