傷ついてもいい
コーヒーを淹れて、テレビをぼんやり眺めていると電話が鳴った。

斎藤からの着信だった。

『もしもし?佳奈さん?』

「おはよう、福岡の朝はどうですか?」

斎藤は、金曜日から福岡に出張だと言っていた。

『うん、いい天気だよ。今から飛行機に乗るとこ』

「そうなんだ」

『なんかお土産で欲しいものある?ベタだけど明太子とか』

「うん、それいいね」

佳奈は早く斎藤に会いたくなっていた。


「ねえ、翔太くん」

『ん?』

「早く帰ってきて」

斎藤は、しばらく口をつぐむ。

『なんかあったの?』


佳奈は、どきりとした。

「何もないけど。早く会いたいの」

『わかった。飛行機に早く飛ぶように頼むから』


「アハハ、ほんとだね、頼まないとね」

笑いながら、佳奈は涙が出てきた。

誰かの温もりを感じなければ、今は耐えられそうになかった。




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