傷ついてもいい
「けど、佳奈が遅刻なんて珍しいね。いつもギリギリだけど、遅れることはないのにー。もしかしてデートだったとか?」

麻衣子が前の席から、グイと身を乗り出してきた。

「バッカ!んなわけないでしょうが!デートだったら、ちゃんと麻衣子に報告するっちゅうの」

そう言いながらも、直己と暮らしていることは、麻衣子には、話せないでいた。

ただの居候だし、変に勘ぐられるのも嫌だったし、だいたい、アイツがいつ出ていくかわからないし。

そんなことをボンヤリ考えながら、パソコンを打っていると不意に名前を呼ばれた。

「佳奈ー、彼氏来てるよー」

「え?」

受付のほうを見ると、直己がブンブン手を振っている。

「あー、相澤くんか」

度々のことなので、もうみんな慣れてしまっていた。

直己は、佳奈に、とっても懐いている学生、ということになっている。

「佳奈さーん」

「はいはい」

よっこいしょ、と言いながら席を立った。

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