幸せになる方法〜「ずっとそばにいたのに.....」スピンオフ〜
数か月して、彼女がフロアスタッフとして、店に馴染んで来た頃だった。

ランチタイムの混雑のさなか、彼女宛てに電話がかかって来た。



電話の相手に心当たりがあるのか、受話器を取る前から彼女の表情は曇り始めていた。

何かあったのかな.......

話しながら、明らかに動揺しているのがわかる。



気に掛かるから、出来上がった料理が並ぶカウンターに戻って来た彼女に、思い切って聞いてみた。

だけど、彼女は曖昧にしか答えてくれなくて、困った顔のまま、ランチ用のライスを盛り付けていく。



そのせいで、ますます気になって仕方ないから、しつこいかなと思いつつ、彼女が運ぼうとしていたハンバーグランチの皿を横取りして、目を合わせてみた。

すると、彼女は驚いた様子を見せたけど、それで俺が真剣に聞いているのをわかってくれたらしい。

重い口を、やっと開いてくれた。



でも、遠慮がちに返って来たのは、何にも考えず、遊び放題の大学生だった俺には、予想もしていなかった答え。

今、思うと、これが、彼女は本当に「お母さん」なんだなと、しみじみ思った最初の瞬間だったかもしれない。
< 118 / 147 >

この作品をシェア

pagetop