もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
立ち去りたかったのは私のほうなのに。
取り残されてしまうと、帰る気力さえ湧いてこない。
テーブルに顔を伏せ、込み上げる感情を必死に押し殺した。
助けてほしい。
こんな日は1人でなんて夜を迎えられない。
残りの力を振り絞って、携帯を開いたとき、
「大丈夫?」
と頭上から声がした。
ゆっくりと顔を上げると、同年代くらいの男がジュンの居た席に座っていた。
「大丈夫?」
首を傾げてジッと私の目を見つめてくる。
なんだか、吸い込まれてしまいそうな、その瞳に一瞬見入ってしまった。
「ねぇ、大丈夫?」
「えっ?うん……」
我に帰った私は、慌てて目を逸らした。
すると、再び私の視界に入ってきた男は
「彼氏と喧嘩?」
と言いながら屈託のない笑顔を見せた。