もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
もうスキすぎて 1
我が家
「ただいま」
「おかえり」
ホテルの一室に入ってきて“ただいま”なんて、おかしいと思う。
けれど、私は事実ここに住んでいるわけだし、この人の言っていることも、あながち間違ってはいない。
週に何度か言う、違和感たっぷりの“おかえり”だけど、緩んだ口元は嬉しさの証。
すべての電気を灯してみたって、どこか薄暗い室内。
そのお陰で、顔を近付けなければ、私の表情の変化には気付かないだろう。
私は濡れた髪の毛をバスタオルで拭いながら、念のため顔を隠す。