もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


警察に連れていかれたら、どうなるのかな。



未成年だから、保護者を呼べとかって話になりそうだよな。



そしたら、とーちゃんに迷惑かけることになる……



バイトのことはなにがなんでもシラをきろう。



だって、とーちゃんにバレたら……



警察はもちろん怖いけど、とーちゃんにバレることのほうがよっぽど怖い。



とーちゃんに見捨てられることは何よりも怖い。



目の前で揉めている3人を眺めながら、ごちゃごちゃと考えていると……



「おぅ!!若造君。何してんだ?揉めてるなぁ~」


と、この場に相応しくない、ハイテンションな声がした。



声のするほうに目をやると、野次馬を掻き分け、私達の場所へとやってきた男。



「あっ、shotの店長さん……でしたよね?」


と、答えたのは警察官。



どう見てもハイテンション男のほうが若い気がするけど、男は警察官を“若造君”と呼んでいるし、警察官は男に敬語を使う。



「若いの、そんなに熱くなるな。おっさんも落ち着けよ」



そう言いながら、男がジュンの腕を掴んだ途端に全員の動きが止まった。



ジュンは腕を捕まれ、動けなくなっているけど、おじさんが動かなくなったのは……



男の目付き。



口角は上がっているのに、鋭い眼光を向けられたおじさんは一瞬にして動きを止めた。



私も、それを見ているだけで動けなくなる。



唾を飲み込むタイミングがわからなくなって、口の中いっぱいに唾液がたまる。



この人、とーちゃんに似てる。
< 229 / 342 >

この作品をシェア

pagetop