もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

ハイテンション男の表情はとーちゃんが見せるものと似ている。



物腰の柔らかい喋り方に微笑んでいるかのような口元。



けれど目を見れば一目でわかる。



その瞳は笑ってなんかいないってことを……



「お前、ジュンか?ジュンだよな?俺だよ。俺!!遼!!」



張り詰めた空気を一瞬にして打ち壊したのは、そんな空気を作った張本人。



「……遼……さん?」



「覚えてねぇのかよ?お前のオヤジのマブダチだって!!」



ジュンが何も言わないから、一瞬沈黙が訪れる。



何でもいいから喋ってよ、ジュン!!と心の中で叫ぶ。



私は見たくなかったから。



ハイテンション男のあの瞳を……



そう思っているのは私だけではなさそうだ。



おっさんと警察官の視線もジュンへと向けられている。



「わかんねぇのかよ?」



そんな中、不貞腐れた男の声が、私達をより一層緊張させた。

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