もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「若造!!」
「はい」
「やってねぇとよ」
「しかし、ですね……」
モヤモヤしたものが私の体を支配し始めて、出来ることなら“やってる”と言い切ってやりたかった。
そんなことは絶対にしないけど、後先のことを考えると絶対に無理なんだけど、そう言えたら……きっと、スッキリする……気がする。
気がするだけで、これからの私の人生を棒にふるような度胸なんか持ち合わせていない私は、抱き締めたままのスクール鞄により一層力をこめた。
警察官と喋っている男に視線を戻すと、喋りながら少しずつ私に近づいてきている。
「コイツは俺の息子みたいなもんだ。何かあるなら店に来い。逃げも隠れもしねぇからよ。そう、じぃさんに言っとけ」
そう言い終えた時には、私の腕は男に捕まれ、ジュンのいるほうへと引きずられる。
「ほら、行くぞ!!」
そして、私を掴んでいないほうの手をジュンの肩へと回し、警察官とおじさんに背を向けた。
「ち、ちょっと……ま、」
警察官は慌てながら、何かを言っているけど、その声も賑やかな周りの声に掻き消されてしまう。
逃れられたんだ。
なんの痛手も負う事なく、あの場を切り抜けられた。
この先の人生の心配も、とーちゃんに迷惑をかけるかもって心配も、もういらない。
私の救世主はジュンではなく、強引に私達を連行するハイテンション男だった。