もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「お待たせ」
ハイテンション男はすぐに戻ってきて、今度は私達の前にパスタをおいた。
「ちょうど、まかない作ってたみたいだったから、これで我慢してくれ」
まかないってことは……
「誰かが足りなくなるんじゃないんですか?」
従業員の人数分しか作っていないはず。
それを私達が食べるってことは、誰かが食べれないってことになる。
「俺の分だから気にせず食え。また作らせてるから大丈夫だ」
白いお皿に盛り付けられている和風パスタ。
湯気が鼻にバターとガーリックの匂いを届けるから、今にも涎が零れ落ちそうだった。
「いただきます」
ジュンに続き、私もパスタを口に頬張る。
「おいし」
「なら、良かった。今度来るときはちゃんとした物を食べさせてあげるから。今日はジュンが急いでるみたいだからな」
そう言いながら含み笑いをしたハイテンション男は、チラッとジュンに視線を送るけど、ジュンは黙々とパスタを食べ続けていた。
小声で話していたのは一言二言だったから、さっきの会話はしっかりと聞かれていたみたい。
けど、そんなことお構い無しでパスタをラーメンを食べるみたいな勢いで食べ続けるジュンにため息がてる。
「しっかりしてる君は高校生?中学生だなんて言わないでね」
「えっ?……はい。いや、高校生です」
突然、私の元へと帰ってきた視線に私は恥ずかしくなり、焦ってしまう。
しっかりしてるだなんて……
思ったことも、言われたこともないから。
「名前、聞いてもいいかい?」
「はい。純麗です」
「純麗ちゃんか。綺麗な名前だね。僕は遼。遼ちんでいいから」
どうしてなんだろう。
一瞬、切なそうな表情をしたのは……
ハイテンション男こと、遼ちんが私の瞳を見つめながら、本当に一瞬、泣いているんじゃないかって顔をしたように見えた。