もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「おい!!じゅん!!待てよ」
捕まれた右手が熱を帯びているように熱い。
“すみれ”とわかったのに“じゅん”と呼ぶ、その声に安心感さえ覚えてしまう。
「何?」
そう、冷たく言い放った私を自分の胸へと引き寄せるジュン。
温かい。
やっぱりジュンは温かくて、涙が込み上げてきそうになる。
泣きたいことなんて何もない。
ただ、ジュンの温もりに触れると反射のように涙が沸き上がってくる。
バラバラになった自分の気持ちは、もう“理性”なんて物ではコントロールできず、たぶん“本能”ってもので感じるがままにジュンの背中に手を回した。
「帰るな」
聞いたことがないくらい優しいジュンの声。
目を閉じれば眠ってしまいそうなくらい心地いい。
「帰らないでくれ」
「もう少し、ここに居てくれ。ダメか?」
そう言いながら、私の体を離したジュンは捨て犬みたいに縋るような目で私を見つめるから、横に首を振った後、
「帰らない」
そう口にしていた。
「戻るぞ」
手を引かれながら、歩く私の頭の中はポーっとしている。
きっと、まだジュンの温もりが体に残っているせい……
「今から美織がくる」
「えっ?誰?」
「俺等が一緒にいる理由はなんだよ?」
“4”と書かれた扉を開けて、先程まで居た部屋に戻ると、いきなりジュンの態度が変わる。
「契約したから……」
私はまだジュンの温もりに酔っているというのに。