もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「俺に付きまとってる女だよ!!美織は」
「で、何でここに来るわけ?」
大きなため息を吐きながら、ソファーに座ったジュンは私を見上げた。
「俺がお前を買ったのは、彼女の振りして美織を諦めさせたいからだ。お前が海で余計なこと言うから、美織は前よりまとわりついてくんだよ。だから、今日話をつけたい。わかったか?」
まくし立てるように、そこまで言い終えたジュンは私から視線を逸らした。
その時、やっと酔いが覚める。
そう、私は買われた女だと……
ジュンが追い掛けてきてくれたのは、目的を果たすため。
私に契約内容を遂行させるためにすぎない。
「余計なことって、お試し期間ってやつだよね?」
「あぁ」
「私はどうすればいい?」
「彼女の振りさえしてくれればいい」
「わかった」
「余計なこと喋んなよ」
「はいはい」
そんなことは百も承知。
それでも、やっぱりあの温もりが嘘だとは思えなくて、“じゅん”って呼んでくれた優しい声が偽りだとは思えなくて、私は大人しくジュンの隣に腰掛けた。