もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
すると、再び静寂を壊すようにジュンの携帯が鳴り響く。
最近、流行のメロディがやけに耳についた。
「わかった。今行く」
ジュンはそれだけ言って席を立ち、部屋から出ていった。
たぶん、来たんだと思う。
私が“好きじゃない”女、美織がきっと、もうすぐここへ来る。
どうやって待ってよう?
歌を歌ってた方がいいかな?
いや、1人で歌ってるのも変だよな……
でも、曲の予約くらいはしておかないと、変に思われる。
きっと、カラオケデートっていう設定なんだから。
私はジュンの着信に使われていた曲と、念の為私が歌えそうな曲を何曲か、予約しておいた。
そして気が付いた、この部屋に絶対的に足りないアル物。
私は慌てて壁に付いている受話器を取った。
「コーラ2つ」
そう。
私達はここへ来てから、飲み物さえ注文していなかった。
遼ちんの店で飲んできたから、喉は渇いてないけど……
カラオケにきて、飲み物を頼まないなんて聞いたことがない。
だから、慌てて注文したけど、女より先にコーラが届くかどうかはわからない。
ジュンもさ、私に彼女の振りさせて、諦めさせたいなら段取りくらい決めておくべきだと思う。
私達はお互いのことを、何も知らないんだから、“話し合う”ってことが重要だと思うんだけどな。
先程、予約した曲が流れだし、私は女が先かコーラが先かと思いながら、じっとドアを見つめていた。