もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

嘘の温かさ



「そんなこと言う必要ありす?ジュンと私の問題ですよ?」



「見えないのよ」



「はっ?」



歳上だし、あまり門をたてたくないから、敬語を使うように心掛けていたけど……



なんだか、無性に苛ついた。



女の話し方にも、喋っている内容も……



作り物って感じがして。



「ジュンレイちゃんがジュン君を好きなようには見えないのよ!!遊びでしょ?それともファッション?大学生の彼氏が欲しいなら、ジュン君じゃなくたって、沢山いるじゃない!!ねぇ、別れて頂戴。好きじゃないんでしょ?それなら、別れて頂戴!!」



顔を真っ赤にして、今にも泣きそうなこの女は何をそんなに剥きになってるわけ?



私達は本当は付き合ってなんかいないし。



ただの契約で繋がれている関係なのに。



思わず、そう言ってしまいそうな衝動にかられる。



それをグッと押し殺し、頭の中で言葉を選んだ。



ジュンに余計なことを言うなと念のを押されたわけだし、言葉選びには慎重にならなければ……



けど、私の頭の中は別のことを考えていた。



こんな話をしてるのに、というか、女はあんなに剥きになっているのに、バックミュージックが余りに軽快すぎる。



来たばかりなんて嘘を吐いたのに、予約曲がはいっているなんて怪しまれてないかな。



後でジュンに小言を言われそうだ。



頭の中はこんなことばかりで、なかなか女に言ってやる言葉がみつからない。



「なんとか言ったらどうなの?」



それは私もそう思っているんだけど、言葉選びって難しい。



余計なことを言わないっていうのは、案外難しくて、ごちゃごちゃと考えてみると、私の発する言葉すべてが余計なことにさえ感じてくる。

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