もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


私よりも先にジュンが口を挟んでしまったことにより、キレるタイミングを逃してしまった。



タイミングは逃しても、このままじゃ気が済まない。



「騙されてる人は騙されてることに気が付かないものよ!!ジュン君、目を覚まして!!」



ハハハッ……面白い。



ドラマでも見ているような台詞に、作り物に見える女の表情。



何もかもが可笑しかった。



「何が可笑しいの?」



剥きになっている女は、好きな奴の前だというのに、息が荒く、鼻の穴なんかもヒクヒクとしている。



でも、今一番笑えるのは私自身だった。



“世間”ってものから見た私は女の言った通りの人間で、どんな理由を並べ立た所でその事実は変わらない。



私はお金なんかいらない。



いくらそう言ったところで、信じてはもらえないだろう。



だって、現に私はお金を受け取り、この体を差し出しているのだから、そう言われても仕方がない。



そんなことはわかっていても、悔しかったんだ。



“世間”での普通や常識に乗っかっていたら、私は私でいられなかった。



それを言い訳にしたいわけじゃない。



ただね、だだ……



理解されなくても、私なりの理由があった。



もがき苦しんだ結果だった。



自嘲的な笑いだけが響き渡るカラオケで、零れそうな涙を堪えることに必死な私は、また一つ罪の意識を刻み込まれる。



“世間”からはみ出した私への当然の報い。

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