もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

「いい加減にしろよ。お前がコイツの何を知ってるんだよ?お前の言うとおりコイツが最低だったとしても、俺はそんな最低な女に惚れたんだ」



「ジュン……君?」



ジュンは何言っちゃってるんだろう?



ジュンだって、私のことなんて何も知らないのに。



仮にだったとしても私が最低な女だって認めてるし。



女は興奮が冷めたのか、ジュンの言葉にあたふたし出した。



「人はな、外から見てるだけじゃわかんねぇんだよ!!何も知らねぇのに、わかった気になるなよ。俺の女に最低だなんて、二度と言うな!!」



馬鹿なんじゃない?



いくら、美織に付きまとわれるのが嫌だからって、そこまで言わなくてもいいと思う。



ほら、泣きそうじゃんか……



「言い過ぎた……こと、は、謝るわ」



「二度と俺の前に現われるな。お前が言葉でコイツを傷つけたことは一生消えねぇ」



「ジュ、ン君?ま……って」



涙は堪えてはいるものの、声が震えて言葉が繋がらない女にジュンはとどめをさす。



「帰れ。そして、二度と現われるな」



「ジュン君。ご、ごめ……んなさい」



「帰れっつてんだろ!!」



怒号と共に、蹴り上げられたテーブル。



肩を震わせた女は、鞄を抱えるように出て行った。



演技でここまで出来るなら、すごい奴だ。



嘘を吐いているのは私達なんだから、美織が少し可哀想にさえ思えてくる。



女が出て行くときに閉め忘れた扉からは、肩を組んで寄り添う男女が見えた。



“両思い”って幸せなのかな?



“付き合う”って楽しいのかな?



肩を組まれている女の子があまりにも、幸せそうに微笑んでいるから、柄にもないことを考えてしまう。



私は誰かと“両思い”になったことも、“付き合った”こともないからわからない。



私の“恋”は苦しいばかりだから。

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