もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

「お腹空いてるから、カリカリしちゃうんじゃない?ほら、食べよう」



「リュウ」



「ん?」



ビニール袋から、ガサガサとお弁当を出しながら、振り替えるリュウはやっぱり尻尾が付いているみたいだ。



「本当に毎日くるの?」



「そのつもりだけど嫌?」



嫌かって聞かれたら……



「嫌なわけじゃない」



「良かった」



「でも、リュウにだって予定があるんじゃないの?」



ん?と不思議そうに首を傾げるリュウ。



「予定?俺ちんの予定を聞きたいの?」



「いや、そうじゃなくて……」



そういうことなんだけど、リュウの予定を把握したいとかってわけではなくて……



リュウには“察する”ってことが出来ないらしい。



遠回しに言っても無駄で、言葉そのものの意味に捉えてしまうみたいだ。



「だから、リュウにだって予定ってものがあるでしょ?それをキャンセルしてまで……ていうか、無理にここに来なくてもいいよ」



「えっ?無理なんてしてないよ」



「でも、予定があるのに、ここに来てるってことは無理してるでしょ?」



「そういうことか!!」



やっとわかってくれたかと胸を撫で下ろした私は、リュウの座っているソファーの正面にあるソファーに腰を下ろした。




「そんなこと気にしないで!!バイトって、働くってそういうことなんだろ?」



「はっ?」



「俺、バイトって初めてなんだ。だから、ワクワクしちゃって。てか、純麗ちゃんって話下手?説明が下手くそ?まぁ、俺には通用するけどね。俺だから短時間で理解できたんだけどね」



「何の話?」



私が話下手なわけ?



私の説明が下手くそなわけ?



と、怒りたいのは山々だったけど、リュウ相手にそんなことを言ったって、なんだか無駄な気がして諦めた。



「もぅ、純麗ちゃんって本当にお馬鹿さんなんだね」



呆れて物も言えないとはこのことだ。



腹が立ったのを通り越して、言葉さえ出てこない。



本当に開いた口が塞がらない。

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