もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
さっきからゴソゴソとお弁当をいじってるリュウは、きっと開け方を知らないんだ。
葢が開かないのは、やり方の問題か、開け口がどこかにあるとでも思ってるのだろう。
お弁当を持ち上げて、底までもチェックしている。
葢が開かないのはセロハンテープで止めてあるせいなのに。
私はリュウの言っていたことを、頭の中で整理して再び疑問をぶつけた。
そうしなければ、話が終わらない。
リュウを普通の人だと思って話していたら、会話は一向に進まないことがわかった。
「私の所に来ることがバイトなの?とーちゃんに雇われたってこと?」
「聞いてなかった?」
リュウは驚いた顔を私に向ける。
「リュウがここに来るとしか聞いてない」
「そうだったんだ。俺はバイトさせてもらえないんだよね。だから、やっと。やっと念願のバイトなわけ。予定をキャンセルしてでも真面目に働くよ!!」
「そう、ならいいの」
そっか……それなら、疑問に思うことなんて一つもない。
とーちゃんは自分が私との時間を作れるようになるまで、バイトを雇った。
そもそも、いつになったらそんな時間が作れるようになるのかわからないけれど……
作る気なんて始めからないから、バイトなんかを雇ったのかもしれないし。
そして、その雇われた人物がリュウだった。
とーちゃんからの信頼も厚く、バイトしたいと願っているリュウと利害が一致したんだ。
だから、リュウがここにいることも、予定を裂いてでも私の元へ来ることも当たり前。
そういう条件のバイトなんだから、リュウは当たり前のことをしているだけ。
少しでも、期待した私が馬鹿だった。
リュウはとーちゃんに、私が寂しい思いをしてると伝えてくれた。
だから、とーちゃんが一緒に居れないなら、自分がと言ってくれたんじゃないかと思った。
こうして毎日、ここに居座られることは迷惑なんだけど、リュウがそう思って、そう言ってくれたんじゃないかって、勝手に勘違いして、勝手に期待して、勝手に傷ついた。
私が作り出す関係は、いつも金絡みだとリュウにまで、知らしめられた。