もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

「それ、セロハンテープで止めてあるから開かないの」



「へっ?」



私の言っている意味がわからないリュウは、私をじっと見つめたまま、ずっと動かしていた手をやっと止めた。



そして、頭のてっぺんから出たような間抜けな声に、何故だかホッとした。



「ほら、葢の四隅にセロハンテープが付いてるでしょ。だから、開かないの」



リュウはとーちゃんとは違う。



きっと、本当にバイトをしたかっただけ。



単純にそんな気持ちだけで、思惑などは存在しない気がする。



だって、弁当の葢すら開けられないんだから。



思惑なんて……言葉の意味すら、知らない可能性だってある。



「マジでかぁ。やられたな」



何にやられたんだか、わからないけど、やっと葢を開けられた喜びなのか、リュウの顔に笑顔が戻る。



「私も食べていいんだよね?」



「勿論!!こっちが純麗ちゃんの。同じく幕の内っていう弁当だよ」



リュウから受け取ったお弁当を開き、食べようと思ったのに、箸を持った私の手が止められた。



「げっ」



リュウの声によって。



「何この弁当?」



「何って?」



「どれが幕の内だよ?ただの和食じゃねぇかよ!!」



せっかくの豪華なお弁当をテーブルに放り出す始末。



「美味しそうだけど」



「幕の内なんか入ってないし」



リュウ君。



幕の内って何?



一体どんな食物なわけ?


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