もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
それは、仕方ないよ。
ホテルのカードキーに元々付いている、部屋番号の書かれた棒状のキーホルダー。
気持ち悪いのは、私のセンスじゃないし。
しかも、ホテルのカードキーのキーホルダーを付け替える人なんているの?
私の場合はホテルに住んでるから“普通”とは、違うのかもしれないけど。
「ち、ちょっと待って!!」
「ん?」
「学校まで迎えに来なくていい」
「何で?純麗ちゃん、学校に彼氏いるとか?」
「いや、学校に彼氏はいないけど、てか彼氏自体いないけど、学校はマズイ」
「何でマズイわけ?」
私にどんなマズイことがあるのか、聞きたくてワクワクしている様子のリュウ。
マズイ理由は彼女だよ。
リュウによく似た瑠伊。
学校まで迎えに来てもらったら、また瑠伊が五月蝿い。
説明するのは面倒くさいし、リュウのことを説明するなら、私の現状もこと細かく話さないとわからないと思う。
瑠伊にそこまで話すつもりもないし、話すべきでもないと思う。
「ほら、あそこ。あそこまで迎えに来て」
「あそこ?」
「リュウと私が初めて会ったカフェ。あそこで待ち合わせしよう」
「わかった」
本当は断ろうと思っていたのに……勢いで、自ら約束しちゃった。
でも、良かったかもね。
キーホルダーを選びに行きたいくらい、この部屋の合鍵を大切にしてくれるリュウに私は救われたかもしれない。
“金”で繋がってしまったリュウと私の関係だけど、合鍵のキーホルダーを一緒に選びに行けば、少しは“友達”に近づけるかな?
“金”の絡まない純粋な“友達”に……